青の騎士と護られ姫
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-岩泉side-
事件から2日後の放課後、距離を置いている莉子の事が気になりつつも、話せずにただ遠巻きに眺める事しかしていなかった。
及川の話しかける回数も増え、自分の代わりまでさせている様でモヤモヤが増える。
「…ずみー?おーい、岩泉!…」
「うおっ、え、あ、わり」
(やべ、全然きいてなかった…!)
「最近ボーッとしてる事多いぞ?大丈夫か?」
「莉子姫が気になんならさっさと仲直りすりゃ良いのに」
「別に、ケンカじゃねーし」
ドリンクを片手に莉子を眺めていると、松川と花巻に話しかけられて我に帰る。
呆れた花巻の言葉にムスッとしながら言葉を返すと自分で「ガキか…」とツッコミたくなった。
「莉子ちゃーん?どしたの?」
そう莉子に話しかける及川を見て自然と2人を見てしまう。
(ついこの間まで、俺もあそこにいたんだよな…)
「もー!莉子ちゃんのバーカバーカ!!」
莉子に背中を押されて拗ねた及川が舌を出して走ってコートに戻るというやり取りをする楽しそうな2人。
そんな様子を他の部員が苦笑してその見ている中、どうしても笑う気になれなかった。
(俺といるより、及川といた方が安全そうだしな)
そんな子供みたいなことを思いながらレシーブ練習に入り、ノルマを超えて交代になった時、莉子と思い切り目が合ってしまった。
「……」
「あ…」
まさか目が合うとは思っていなかった為驚くと、同じように驚いた莉子の顔を見て、慌てて目線を外して背を向ける。
話したいのに話さないのは自分のせいだとわかっているのに、素直になれない苛立ちが募っていくのがわかった。
*****
部活が終わり、一人で帰ろうとさっさと着替えると、いつも遅い及川が同じペースで着替え、後輩に絡む事なく帰る準備をする。
珍しい事もあるもんだなとその様子を見ていると、及川は視線に気づいたのかニッコリと笑顔を作った。
「ふっふーん!俺だって早くしようと思えば出来るんだよ!」
「ならいつでも早くしろ、クソ及川」
「ちょ、褒めてくれたっていいじゃん!」
「なんで早く着替えたくらいで褒めんだよ」
部室を出て早々に帰ろうとするが、及川が何かと話しかけてくる為結局並んで歩く。
門にいる莉子を見て、及川が莉子の為に早く着替えて、3人で帰ろうとしていた事に気付き、ジロリと及川を睨んで通り過ぎようとした。
「あの…!ハジメ君!!い、一緒に…帰っても…いい…?」
(俺はお前を守ってやれないんだよ)
「……及川、送ってやれよ」
「…岩ちゃん?なんで、3人で
「悪ぃ、俺今日は用事あっから」
(こんな状態で一緒に帰れるか)
前を通り過ぎようとした時、莉子は泣きそうな声で話しかけてくる。
ちゃんと話す事は久々で、けれど莉子の顔は見ていられなくてすぐに逸らしてしまい、何もない用事をでっち上げてその場から逃げた。
『岩ちゃんさー、いい加減にしないと莉子ちゃん泣いちゃうよー?』
家に帰って暫くすると及川からこんな電話がかかってきた。
「ンだよ、電話で説教かよ」
『ん〜、聞きたいことあってさ!…岩ちゃんってさ、莉子ちゃんの事好きだよね?』
及川のその一言に、表情だけで無く、部屋ごと時間が止まったように感じた。