青の騎士と護られ姫
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-岩泉side-
練習試合の次の日、今日から莉子が正式なマネージャーとして入部になる。
昼休みに花巻や松川と昼食を食べた後、及川と2人で莉子の主なマネージャー業を決めようと教室へ向かっていた。
「ねぇ、なんか人集りができてるよ?しかも男子の」
「…なんかいんじゃね」
(どうせくだらねぇナンパかなんかだろ)
同級生の男子が集まっていると3年だからか威圧感があり、凄い存在感を放っていたが興味もなく通り過ぎようとする。
トントンと肩を叩きながら及川が人集りを見ながら話しかけてきた為、興味が無い事を示すために興味の無さそうな返事をした。
「岩ちゃん冷めてる!気になんないの!?」
「なんねーよ。そんな事よりやる事あんだろ」
「可愛い女の子が及川さん目当てで来てるかもしれないじゃん!」
「なら行ってこい、その代わり莉子の事は俺が勝手に決めるからな」
集まった男子が何やら話し、及川の喚き声で特に内容が聞こえた訳ではないが、高校3年生の男子が揃って何かをするなど大概子供っぽいことだと決めつける。
隣で喚く及川や、きっと自分ですらそう見えているだろうと思う時もあるからだった。
どうでも良い事を言う及川を躱してさっさと仕事をしてしまおうと人集りを通り過ぎようと歩調を速める。
「た…助けてっ!」
(…この声…)
「え!?ねぇ今、声しなかった!?ねぇ!!」
(莉子!?)
「お前さっきからうるせぇな!」
面倒は及川にかけられる分で十分だからか、他の事に特に首を突っ込んだりしたいとも思えない。
いつもならきっと通り過ぎるだろうこの状況の中で、絶対に聴き逃す筈のない声を聴いて早足になっていた足がピタリと止まった。
また横で喚く及川を黙らせ「悪い、通してくれ」と言いながら人を掻き分けて行くと急に体に衝撃が走り、慌てて受け止める。
「ハジメ君〜っ!気づいてくれて良かった〜!」
「おわっ!…莉子、どうしたお前」
(ビビった…抱きつくと思わなかった…!)
莉子が人目も気にせず抱きついてくることなどまず無い上に、自分に抱きついてくるとは思わなかった。
あまりにも驚きすぎて周りで騒ぐ及川の声すらちゃんと聴こえず、徐々に自覚して強張る体に“落ち着け”と自己暗示を続ける。
「まさか、岩泉の彼女だったのか?」
「キミ達莉子ちゃんの事ナンパするなんてどーゆー神経してんのさっ!俺の莉子ちゃんだよ!?」
(彼女っ!?…つーかお前のでもねーよ!)
「黙れクソ及川!…俺も彼氏じゃねーけど…お前ら1年怯えさせてんじゃねーよ」
同級生の1人に“彼女か”と言われピクリと眉が反応し、その後の及川の“俺の莉子ちゃん”に更に反応する。
隠れていた莉子はよっぽど怖かったのか制服を掴んで離そうとはしない。
頭を撫でて安心させ、莉子を困らせた同級生達を少し睨みながら言うと睨みが効いたのか少しだけ後退りをした。
「大丈夫か?」
「そういや莉子ちゃんどうしたの?」
「珍しいな、3年の教室に来るなんて」
「あ…麻里先輩と宏香先輩に会いたくて…!」
「あいつらなら教室だろ、ほら、行くぞ」
及川の質問で用件を聞くと、クラスメイトに用事があると聞き、莉子の腕を掴んでクラスへと向かう。
莉子は前日に何も言わずに離れた事を謝り、それを快く許す2人を見て莉子にも心強い味方が出来たんだなと安心した。