腹黒王子と毒舌王女
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「くっそがァァア、スマン!!」
ベンチに帰るなり、岩泉が荒れる。
「は は は」
「何笑ってんだぶん殴るぞ」
「すぐ殴るっていうのやめなよ岩ちゃん」
「安心しろ、おめーにしか言わねーし殴んねーよ!」
(俺だけ!?)
今の攻撃を影山が読んでいた。
岩泉にそう話すと、黙って聞き始める。
「今までみたいに機械的に考えるだけじゃなく、終盤・こっちの劣勢っていう状況・岩ちゃんと俺の超絶信頼関係」
「あってたまるかそんなもの」
即座に否定する岩泉をシカトして先を続ける。
今はいちいち反応できる心境ではない。
「そういう総合的な判断をしてきたって事…!」
腹が立つ。
“凡人は天才には敵わない”と、そう突きつけられている様で、腸が煮えくり返る思いだ。
「あの“爽やか君”は、飛雄に何を教えた」
まだ進化するのか。
まだ成長するのか。
「ただの独裁の王様が、マトモな王様になろうとしてる。なんだこれ、すごいムシャクシャしてんのに、この感じ…!!」
烏野を振り返る。
烏野はピリッとしたその空気を感じ取った。
「はやく、早くやろう、最終セット!!!」
*****
「セット前に考えろー!!話しろー!!」
溝口の声がかかり、全員が集合して作戦を練る。
「多分もう神業速攻のサインは変えて来てるよな」
「単純なサインだからきっといくらでも替えが利くんだよね〜」
「ボールを目で長く追ってる様なら普通の速攻、ただ突っ込んで来る時は神業?」
「確かに10番自体を見るのがいいか」
「でもあくまでチビちゃんは優秀な“囮”。それを忘れない。オッケー??」
みんなが日向に気がいきそうになるのを止める。
日向にさえ引っかからなければこのメンバーなら大丈夫だと確信があった。
ピーッ
笛が鳴り、ファイナルセットへと向かった。