長編
□慟哭
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「夜分に無理いって本当ごめん!!」
「全くだよ。で、その彼の症状はどうなの?咳はでてるのかな?」
「今はまだ出てないから、早い方がいいと思って。。。」
そう。と短く答えると
ガサガサとケースを開けて
何種類かの薬をだしてきた。
「本来なら本人の診察なしではダメなのわかるよね?」
と言いながらもがさっと大量の薬を出して来てくれた。
「よかったね名無しさんちゃん?俺が紛れもなく医者で、個人で病院経営してて、薬局も持ってて」
「本当助かる!!ありがとう忍!!あ、これ私の保険証。これで適当に書いてくれる??お金はカードでいーい??」
ため息混じりに急いでるんでしょ?と保険証をコピーし薬の服用方法などプリントアウトするとレジへと向かった。
「後は高額療養費請求しとくから大丈夫。その彼の元へ帰れなかったら俺のとここいよ?」
「大丈夫!絶対戻れるから!」
ありがとうとお礼を述べると
待たしていたタクシーへと乗り込み
社へと向かった。
***
翌朝
やはり
どこにも彼女の姿はなかった。
残されていたのは
彼女がいつもはめていた指輪が一つ。
沖田はその指輪に紐を通して
首から下げていた。
土方から聞かされた言葉に
沖田は心臓を鷲掴みにされた気分だった。
もちろん自覚症状がなかった
訳ではない。
体が重く気怠い。
咳も出ている。
懸念があったからこそ
彼女から身を引こうとさえ
思っていた。
「名無しさんは狡いよ。内緒で居なくなるなんて。。。」
沖田は首から下げている
彼女の指輪を手のひらでぎゅうっと
握りしめた。
。。。こんなことになるんだったら
僕は君から離れなければよかった。
青く晴れた空に向かって
手を伸ばして
沖田は言霊を願いを込めて紡いだ。
「お願いだから僕の元へ帰って来て。。。!」
。