長編
□本心
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「土方さんで名無しさんす。」
短く「入れ」と返事が聞こえ
すぅっと襖戸を開けると茶ののった盆をもって彼女は部屋へと入った。
茶を土方の前へ差し出し、自分の分も手に取ると彼は口を開いた。
「単刀直入に聞く。お前はどこまで知っている?」
「どこまでって?」
土方の問いに彼女は戸惑った。
彼女の知っているのは史実やゲーム、ドラマに属するもの。
うーん、と考えてからゆっくりと答えを選んだ。
「前にも話したけど、私は史実っとでも言うのかな?そんな大それた物じゃないけどそれで新選組を知ってるの。」
「じゃあなんだ。それには総司や平助が鬼に襲われるって書いてあってのか?」
キラリと土方の双眸が光った気がした。
うっと言葉に詰まる彼女に土方はこう続けた。
「あの件。お前の言う通り本命は池田屋だった。走って駆けつけた先には怪しい二人組がいて、総司と平助は対峙していた。全てお前の知ってた通りだったって事か?それがお前のいた世界に史実となって語り継がれてんのか??」
彼女は土方の問いに対して
ゆっくりと言葉を探す様に話をしだした。
「私も信じられないんですけど。。。多分土方さんの仰る通りなんだと思う。私はなにがこれから起こるのか見てるのよ。ここに来る前に。」
でも。と付け足した。
知ってた話と居るべき人が居ないと言うこと。
全て覚えている訳じゃないと言うこと。
「そして。。。選択によって未来は変わるんです。私は知ってた未来を変えちゃった訳で。正直、この後どうなるのかわかりません。。。」
未来を違えた。
彼女の言葉に
それは沖田と藤堂のことを指しているのだと土方は察していた。
すみません。。。と項垂れた彼女に彼はこう告げた。
「あやまんな。逆に報せてもらったおかげて皆無事だった。お前には感謝している。」
「。。。はい。」
彼女は土方に話ながら気づいてしまった。
未来を違えたことで何か変わってしまったかもということ。
そしてなによりも
この先
新選組には。。。悲しい未来しかない。。。
もし、彼女の知っていることが
この先訪れるのだとしたら。
この目の前の人も。。。
蝦夷で戦死。
もしくは「薄桜鬼」となる。
助けられるのだとしたら
助けたい。
「私になにが出来るんだろう。。。」
彼女思わず声にもらし
土方はその声に顔を歪めた。
。