短編

□微熱2
1ページ/4ページ

しとしとと
雨音が響いている。


「。。。。ん。。あれ?」


沖田は腕を伸ばして
隣に居るはずの温もりが
なくなっている事に気付き
躰を起こした。


「疲れてたのかなぁ。 名無しさんが起きれば
気付くはずなのに。」


褥に手をやると
まだ温かい。


ふと外から話し声が聞こえる。
沖田は静かに耳を傾けた。



***



「大丈夫か?具合が悪いと
斉藤から聞いていたが。」

「はい、すっかり。
土方さんは心配性ですね」

「嘘つくな
あんまり無理すんじゃねぇ。
肋骨やられてんだろう?
お前は俺たちと違って女なんだ。自覚しやがれ。」


土方は腕を組みながら
ため息混じりで小言を口にすると総司はどうした?と問いた。


「総司なら寝てますよ。
ご飯食べてないからおにぎりでも作ってこようと思って。」




***



沖田は
大きなため息をひとつ吐いた。


。。。まったく。君って子は
僕のことなんていいのに
まったくわかってないんだから
それに。。。
よりによってなんで
土方さんに言うかなぁ


そっと縁側に出て行こうとして
次の言の葉に沖田の手は
ぴたりと止まった



***



「総司も疲れてましたから
ゆっくりさせてあげたいなと。」


ふわりと笑みを浮かべた 名無しさんに


「そうだな
あの日からお前の看病してたの
総司だからな
あいつろくに寝てねぇかもなぁ。
まったくあの総司がなぁ。
珍しい事もあるもんだ。」


苦笑いを浮かべた土方に
名無しさんは首を傾げるが
なんでもねぇよ。と流された。


「あんまり無理すんじゃねぇぞ」


名無しさんの頭をぽんと叩くと
土方は自室へ 名無しさんは
炊事場へと足を向けた。





「本当、嫌だなぁあの人
全部見透かされてる気がして。」



すっと襖を開け
土方の前に沖田は姿を現す


「おぅ総司。起きたのか。
あいつならお前の飯作りにいったぞ?」


。。。なんかイライラする。


沖田は土方に
冷たい視線をおくり
知ってますよ。と受け答えた。


「僕は全然疲れてなんかいませんから
お気遣いなく」

「なんだ。聞いてやがったのか」

「ええ仕事に支障なんて
きたしませんよ。これ位ではね。」

それに。と沖田は続ける。

「僕のせいで彼女が怪我をしたんだ
それを看病しても別におかしいことは
何ひとつないでしょ?それとも。。。」


沖田の台詞に土方は眉を寄せる。


「それとも、僕が
名無しさんの側にいることに
なにか問題でも?」

「。。。何が言いてぇ。」

「別に。。。
じゃあ僕も炊事場へ行くんで。」




沖田の後ろ姿に
土方はぼそりと独りごちた。



「俺だって 名無しさんの
心配してもいいじゃねえか。。。」






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ