短編
□微熱
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「なんだ名無しさん、起きていいのか?」
斉藤が朝餉の準備に炊事場へ入ると
先日怪我を負った名無しさんが既に準備を進めていた。
「一は心配性だね〜。そんなにやわじゃないって。」
おはよ〜っと笑顔と共に
彼女の明るい声が返ってきた。
「だが、あんまり無理はしない方がいい。」
「でも総司の作るご飯より私の方が美味しいでしょ??一も美味しい朝餉の方がいいでしょ??」
有無を言わさず手際良く
調理を進めていく名無しさんに
何をしたらいいか指示を仰ぎ
共に朝餉の準備を進めることにした。
***
「あれ??名無しさんちゃん、君なにしてるの??」
「おはよ〜総司。丁度いいや、これ盛り付けて。」
炊事場には
味噌汁の良い香りが立ち込めている。
だがしかめっ面をして
名無しさんの真後ろに
沖田は立った。
「ねぇ、答えになってないよ?僕は真剣に聞いてるの。誤魔化さないでもらえるかな?」
「見ればわかるでしょ。ごはん作って。。。」
言の葉を最後まで言い切る前に
沖田は名無しさんの額に手を伸ばした。
ぴくっとなる名無しさんに思いっきりため息をつく。
「まったく。。。まだ熱があるじゃない。。。一君、後お願いね。」
「承知した。」
沖田が近付くと
名無しさんの躰がふわっと浮き
「ちょっ。。総司っ」
「黙ってて。君は僕と部屋に戻るの。」
歩ける〜と喚く名無しさんを無視して
沖田は抱き抱えながら歩いていった。
炊事場から出る二人の背後から
「すまん。」
と斉藤の声がした。
。