長編
□すれ違う
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「名無しさんちゃん
今日はみんなで飲みに行くんだ
たまには名無しさんちゃんも
一緒にどうだ?」
「行く〜!」
永倉の誘いで急遽
島原に呼ばれた名無しさんだった
沖田はしかめっ面をしながら
「君が行くなら僕が行かない
理由はないよね?」
といって着いてきた
まさかこんなことになろうとは
その時は誰も思いもしなかった
***
「沖田はん久しぶりどすなぁ」
女からみても雅な風貌
名無しさんが見とれていると
紫と呼ばれる花魁は
沖田にしな垂れながら
酌をする
「あぁ君か 久しぶりだね」
「全然きてくれへんので
えろう淋しかったわぁ」
。。。え?
なになに?昔の遊女?
なにやらこそこそと二人で話しては
笑い声が聞こえてくる
わかってはいても
目の当たりにすると面白くない
。。。綺麗な子だもんね
スラリと伸びた手足
白くてハリのある肌
綺麗に着飾れた容姿
何より若い
ふと名無しさんは自分の姿を見る
紅色の着物に紺の袴姿
どこからみても男同然
化粧もなく
肌もきっとくすんでいる
はぁっと
大きくため息をつくと
横にいた原田が声を潜めて
話しかけてきた
。