長編

□涙
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名無しさんは
ふと夜中に目が覚めた


いつものように
腕が絡みついている


振り向かなくてもわかる
この腕は愛おしい人の腕


沖田はいつの日からか
いつも彼女を抱いて寝る


するっと身を離そうと褥の中を動くと
その腕が絡みついて離さない



愛おしい



その感情は溢れるばかりで



「そんなに優しくしないで。。」



腕の中でそっと名無しさんは
呟いたが


静かな寝息が聞こえるばかりで
その返事は返ってこなかった


沖田は薬を服用してから
体調を崩すこともなくなった


顔色も良く毎日の様に
巡察 剣術の稽古にいそしんでいる



未来を変えることが出来た



だけど
私と総司の未来は。。。?



わからない



取り留めもない事を
考えてしまうと眠れない


温かい腕が絡みつけばつくほど
胸が苦しくなる



私はここにいるべき人間ではない
わかっていても彼を求めてしまう



いつかくるであろう別れの日



離れたくない
この腕の中でずっと眠っていることが
出来るのならば。。。



私はここにいたいと願う



大きな掌に自分の掌を重ねて
そっと指を絡ませて


名無しさんは沖田に背を向けながら
一人涙を流していた



また空が染まり
夜明けを告げていた




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