長編

□時空
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僕は一瞬
自分の目を疑った





***



「うぉーっっ出来な〜い!!」



静かな朝だったが
とあるへやから声が響いた


「どうしたの?名無しさん
入るよ」


隣の部屋の沖田が
訝しげな表情でその部屋に入ると
長い黒髪と格闘している
彼女が目に入った


「総司〜出来な〜い」


髪を紐で結うなど
したこともない彼女にとって
櫛と髪と紐で悪戦苦闘を
しいられていた


「なに?髪を結いたいの?」

「うん。せっかく総司に
結い紐買ってもらったし男装なら
土方さんみたいに高い位置で
結いたいんだけど」


土方
という名を聞いて沖田の顔が
ひくりと引きつった


「近藤さんみたいに結えばいいのに」

「え〜!?長いからへんだよ!
ポニーテールがいい〜!」

「ぽにーてーるがなにかわかんないけど
つまり高い位置で結いたいんだよね。
はい 櫛と紐かして」


言われるがまま彼女は
沖田に櫛と結い紐を手渡すと
背を向けて髪をお願いした


「名無しさんの髪さらさらで綺麗だね
痛かったら言ってね?」


彼女の長い黒髪に
沖田は櫛を丁寧に入れる

その手が優しくて
くすぐったい様な
気持ちいい様な感覚におちいっていた


「はい出来たよ
うん。かわいいかわいい」


満面の笑みで沖田は微笑み
満足気に彼女を見下ろした


「おっ?!名無しさん
今日から男装してんのか
支度出来たらこいよ〜朝飯だっ」


藤堂は元気に声をかけると
バタバタと広間に向かっていった




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