†ANGEL story V †

□†【3】†
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はぁはぁ…

《…はぁはぁ》

此処は煉獄
私という天使の存在は
此処の魔物や怪物達の的になる

まるで地上の夜の電灯に吸い寄せる虫の様に

ああ
電灯が私で
虫が…奴等だ

ディーンと此処へと飛ばされたが
これはきっと
あの武器の副作用だろうか

《……》

倒して逃げてを繰り返し
休む暇も無いくらいに

私はディーンからも逃げていた
彼を巻き込む事になるからだ


彼は
生き延びているだろうか
…だが
救う事は難しい
苦汁の選択だった

私が居る此処は
私の悪行に対しての罰だと考えている
私は此処で
魔物や怪物に引き裂かれ死ぬのだ

なのに…何故
私は闘いながら
逃げているのだろう
これは神が創りだした戦士の性だろうか
ただ…死ぬわけにはいかない


《…………》

灰色の空と
強い獣の匂いと血の匂い
身体は泥にまみれ
口の回りは髭が伸び
私はだいぶ汚れてしまった…
だがソレをどうにかする事は無理だ


無駄に力を使ってはいけない


《…私の悪行への罰の
墓場にはお似合いの場所だな…》

ディーン…すまない

すまない

こんな場所に独りにさせて

最後まで私は
きみに酷い事をしてばかりだな




逃げて辿り着いた川辺
私は汚れた顔を
川の水で洗い流す

暫くしゃがみこみ
行く宛も無く
光も無い灰色の世界を見ていたら

ーキヤアァスッ!ー

たくさん聴いた
低いハスキーボイスの
ここちよい男の叫びが

《………ディーン》

彼は…
私を見つけてしまった

【はぁはぁ…キャス】

私を見つけたディーンは
とても嬉しそうで
とても安堵した顔をし
【…似合ってるぜ
そのうぶ毛♪】
ぎゆッ…
《ありがとう…》
珍しくディーンが私を抱き締めた

【頭は…大丈夫なのか?】


《ああ…
ディーンそいつは…バンパイアか?》

【ベニーだ
コイツが此処から抜け出す方法を
知っていると言って
おまえを探してたんだ】
(……)


《私を…探していたのか?》

【あたりまえだ!
突然消えやがってッ!
ウロウロしてんじゃねぇよ
…来いよ
出口を探しいに行くぞキャス】
(……)

《ディーン…私は
きみとは一緒には行けない》

【あ!?】
(……)

《私は…此処に残り
きみとは共に行かない》

【何を言ってんだ!
おまえは俺と
此処から抜け出すんだ!!
おまえを置いて行けるわけねぇだろう!】
(……ディーン)

《私は…誘き寄せる
たくさんの魔物や怪物を
共に行動はできない》

(そいつの言う通りだ
天使は置いて行くべきだ)
【ベニー!!…黙れ】

《ディーン…頼む
わかってくれ…》

【わかった
じゃあおまえは此処に残れ
何て俺が言うと思ってんのか!?
あ!?キャス!!】
(…人間が天使を叱るとか
初めて見たな)

《…ッ…おいバンパイア》

【?】
(なんだ?)

《本当なのか?
此処から抜け出せるのか?》

【……】
(ああ…本当だよ
神が創った人間の門ってのがある
アンタは出れるかわからないが)


《………》

【キャス?
おまえも絶対に
此処から抜け出せる
俺はそこに着くまでは
絶対に死なない!
どんなに敵に囲まれてもな
俺を…信じられないか?】
(……)

《きみを信じている…だが》

【いいからおまえは
俺と一緒に来るんだ!OK!?】
(………)

《…わかった》



駄目だ…
こうなったディーンには
私は何も言えない


ディーンは私の手首を掴み
前へと歩きだした
バンパイアの男は
そのディーンの前を歩き
人間の門まで誘導していく

彼等には強い意思がある
此処から出るという意思が
私は…

(………)

私だけは違うのだ


バンパイアが私を見ている
彼はとても賢い
私が邪魔だと目が言っている

【キャス…】
《ディーン…》

ディーンも本当はわかっている筈だ
何故きみはそんなに強いのだ
……いや
強くならなくてはならないのか?
私がいるから
きみの心は晴れた時は余り無い
ディーン…すまない
きみの気持ちには
答える事は出来そうにない…


バンパイアの男が
木に寄り掛かり休憩をと
もうずっと歩いているからだ
人間の門には
近づいていると男は言うが

ディーンは川辺へ向かった
私は少し離れた場所で
ディーンの広い背中を見つめる

【キャス?
ストーカーはやめろ
隠れてないで隣に来い】

ディーンは少し
怒り混じりで言葉を
私は周りを見ながら
ディーンへと近づいた

【…顔を洗えよ
似合わねぇよおまえには
赤が…】
《そうか?…わかった》

川の水で顔を洗う私を
ディーンが見つめながら

【…キャス】
《……》

濡れた私の顔を
大きな少し固い掌で
水気を払った

【…♪♪】
《……》

何だかとても嬉しそうだ
どうやらディーンは
私を…許してくれたみたいだ
隣に居ることを

【その仏頂面が
恋しかったよカスティエル…】
《…ディーン
私もだ…きみの怒鳴り声が
恋しかった》

【………なんだよソレ】
《??》


ディーンは掌で
【まぁ…いいさ♪】
《……》
私の頬を軽く叩き

【挨拶をしろ…
俺にダケのあの挨拶】
《……いま?此処で?》

【何処でだって
挨拶は自由だ】
《……バンパイアがいる》

【寝てる
早くしろよ焦らすなキャス
それとも何だよ!嫌なのか?】
《……子供みたいだ》

【子供じゃねぇよ
立派な男のチ※コがついてる!】
《……下品だディーン》

ディーンの綺麗な
ヘーゼルグリーンの瞳が
私の瞳の奥く深くまで見つめていて

私は…その
強い強い瞳へと吸い寄せられる

彼は本当に不思議な人間だ

私は頬にあるディーンの手に手を添え
ゆっくりと顔を近づけて
【……♪】
口角が上がっていく
綺麗な形をしたディーンの唇へ
《ディーン…》
私の唇を押し当てた

ディーンの手が私の頭を掴む
そのままディーンは
強く私の唇を食らいつき貪る
私の息が止まる程に


《はぁはぁはぁ…ッ…》
【ははは♪】

ディーン…

私に優しくしないでくれ

私には
そんな価値はない
きみからの信頼を受ける価値はない

【…キャス
地上へ戻ったら
続きをヤるぞ♪】

《…………》

私は
まるで…ルシファーの様に
同士と人類を

(……そろそろ進むぜ?
お二人さん…)

【OK
ベニー…行くぞキャス】

《………ああ》

私は…
やはりきみとは行けない

私は此処で…死ぬべきなのだ

(なぁ…二人で行こうぜディーン)
【答えは駄目だ】
《……》

(ディーン…)
【答えは駄目だ】
《……》

(…ディーン…それ
今の地上のクイズ遊びか?)
【ベニー…黙れ】
《……》

(…はは
人間にバンパイアに天使の道中記
面白いな案外
だが…天使は)
【ベニー…俺とキャスは家族だ】
《……》


(家族?…人間と天使がか?)
【ああ…
だからこいつは置いて行かねぇ】
《……》

(……そもそも
おまえたちは
何故知り合った?)
【ああ〜…ベニー
それ聞いちまう?
やめとけ日が暮れる】
《…ディーン
此処には日は上がらない
日は暮れたままだ》

(………)
【……】
《??》

(なかなか強烈キャラだな天使は)
【うちの天使だけだ
こんな脳天気天使は
変わったやつなんだ】
《脳天気??》

(……なるほど
類は友を呼ぶか)
【??】
《??》

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