†【another story】†

□†【共存とは】†
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ー…カスティエルは
凄く格好いい顔だし
仕事が出来て真面目だし優しいし
でも…つまらないのよねー

ー………ー

ーごめんなさい…
別れましょう
私‥今ディーンって男と
付き合ってるのよー

ー……はぁー


なんと言えば良いか
つまらないのよねと言われ
更に二股をされていた

《‥‥‥‥》

気づかないものだ
愛が無くても彼女は
私と性交をしていた事にも
性交=愛とは限らないのだな

《‥‥はぁ》

ー…あのー

《‥??》

ー定期を落としましたよ?ー

大学生くらいの
長身の男性が
私が落としてしまった定期を
駅の混雑の中を掻き分けて
息を切らして駆けてきた

《ありがとう
確かに私の私物の様だ
助かったよ…
トレンチコートの内ポケットが破けている
コレが原因か…》

ーどう致しまして
あ…ー

息を切らして駆けてきた男が
スッと私の首もとに
大きな手を伸ばし
《??》
ーボタンが‥ー
掛け違いしていたボタンを
器用に直した

《度々すまない
少し今日は
考え事をしていたのだ…》
ーでしょうね
眉間にシワが寄ってますからー

それは
《‥‥ああ〜…
お礼をしたいのだが》
いつもの事だが…

ーえ?
定期を拾った
お礼をですか?ー

《ああ…あとは
ボタンを直してくれた礼を…》

これくらいの事で
お礼を?と
彼は疑問の顔をした
ただ…少し誰かと
私は話がしたかった

[じゃあ…
お言葉に甘えて
僕の名前はサミュエルです
サムと呼んでください♪
貴方は?]

《私の名は…カスティエルだ
宜しくサム》

私と青年のサムは
近くの喫茶店へと入った
彼は
サラダと珈琲を

《‥足りるのかい?》
[ええ
大盛りにしてくれたので
僕は肉系は余り食べないから
貴方は?]

《‥私は
何も食べない
最近は…珈琲を
仕事の付き合いで飲むが》

私には秘密がある
[断食か…何か?]
これは…誰にも言えない秘密だ


数年前に私は
此処へ来た
仕事でヘマをし
私は見放され捨てられた

私の居るべき場所へは
よって…帰れず
私は此処で暮らす事に決めて
今もいついていた


[何を悩んでいたんですか?]

《‥‥フラれたのだ》

[‥ああ〜…それは残念です
ただ
もっと貴方に合う人間が
また現れますよ]

《‥‥だと良いが》

[キャス…
僕も昨日
彼女にフラれたんだ
だけど仕方ないと僕は思うんだ]

《‥何故?》

[う〜ん…一番は
相手との生活の違いが原因かな
彼女には彼女の
僕には僕の
生活と合う人間では無いと
やっぱ…上手くはいかないんじゃないかな
勉強ばかりして相手にしてくれないと
泣かせてしまった
けど…僕は将来
弁護士になりたいから
勉強を止める事は出来ないから]

《‥ほう》

[それに…そうなる運命だったんですよ
もしひき止めたとしても
僕は変わらないから
結果彼女はまた
泣きながら僕に言うだろう
サミーは私より
勉強が好きなツマラナイ人間だとね]

《‥‥‥きみは
賢いな…とても》

[‥貴方の話を
聞かせてくれよ]

《‥此処に住み着いて
私は此処の環境に合わせて
生きてきた筈だった
此処の私くらいの人間は
皆 働き生きている
だから私もそう生きていたが
それだけでは…駄目だったようだ
此処で初めて出来た彼女に
私はそれを思い知らされたのだ》

[‥今まで
何処にすんでいたんだい?]

《上だ‥》

[‥‥上ですか
ああ〜…キャスは間違ってはいないよ
やっぱ男は稼ぐ為に
働くべきだと思うんだ
いつか結婚して子供ができて
その家族を養い守る為にね
キャスと付き合っていた彼女は
浅い関係を求めていたのだろうね]

《‥‥浅い?》

[ああ〜…結婚まで
考えていなかったんですよ
でなければ
働く男をフルなんて
ただ…僕達の欠点は同じだ]

《‥欠点?》

[‥‥‥‥彼女を
蔑ろにしていた節がある
僕は勉強
キャスは仕事でね]

《‥成る程》

[くく…
僕達が付き合っていたら
上手くいっていただろうね♪]

《‥‥‥え?》

[お互いを理解できた筈だよ]

《‥うむ
ありがとうサム
私はまだまだ此処を
学ばなければならないな…
ああ〜…そうだ
不動産へ行かなければだった》

[‥‥もう閉まってますよ?
もしかして…]

《ああ…
私のマンションだったが
名義を変えられていて
別れと同時に追い出されてしまった
そろそろ泊めてくれている
友にも悪いしな…》

[ああ〜…大変ですね
よかったら
住む場所が見つかるまで
僕のアパートを使っては?
ちょっと狭いけど
仲良くなったし
僕達二人なら上手く一緒に住めるよ]

《‥‥いいのか?》

[ええ♪
キャスは男性なのに
とても綺麗だから
僕はこうして話したり
見ていて全く飽きない
もっと一緒に居たいしね]

《‥ありがとう》


私は此処で生きなくては
いけなくなり
彼女との別れがきっかけで
此処で生きる事に疑問や
疎外感を感じ
正直先が見えなくなり不安になっていた

そんな時に
真っ直ぐな優しい青年のサムに出会い
私はもう少し
此処で生きてみようと思ったのだ

青年のサムのアパートは
とても清潔にされていて
とても心地よかった
前に居たマンションでは
私が物を元に戻しても
同居人がまた…散らかしていたからだ

無心で働き貯めに貯まった金で
私は青年のサムと
服を買いにいった
今一服選びが苦手な私を
青年のサムはサポートし購入したら
サムと同じ様な服が並び
サムはとても嬉しそうだった

《‥‥♪》
[キャス…ジーパン姿
可愛いね♪]

《動きやすい♪》
[ははは
息抜きで散歩にいかないか?]

こんな仕事と勉強の日々が
それぞれ続き
私とサムはすっかり忘れていたのだ
私が次に住む場所を
探す間に一緒にとの条件を

私は仕事帰りの
閉まった不動産を見ながら
ふと思い出したのだ

甘えすぎてしまっていたと

ふと
感情の中で
思ったのだ

[‥え?]

《仕事の帰りに
不動産へ行き
住みかを探してきた
契約も済ませたから
明日にでも…出ていくよ此処を》

[何故?]

《ああ〜…最初の
きみとの約束だったろ?
私の住む場所が
見つかるまでの間
此処に留めてもらうと…》

[……あ…ああ
そうだったな
僕がそう言ったね
キャスはそれで本当に
出ていきたいのかい?]


本当は…青年のサムと
《………》
このままずっと
一緒に暮らしたいと思うのが
私の本音だが…

[どうなの?]

きみに甘えすぎても
また…
あの時と同じように
私は捨てられてしまう気がするのだ

サミュエル…きみにだけは
《出ていくよ…》
私は捨てられたくない


住みかなど
私には必要は無い
ただ
此処で生きるという事は
共存しなくてはならない

その為には
私には知る必要があった
知るには
真似る必要があった

《…サミュエル?》

[いいよ…
僕達が出会う前の生活に
二人で戻るだけさカスティエル
部屋が…広く感じるだろう]

《…そうだな
私が来てから
この部屋は…狭くなったから》

[…それはそれで
僕は良かったけど
キャスが出ていくと決めたなら
僕は止めないよ…]

《…ありがとうサム》

きみは…
此処に住み着いてから
たくさんの人間に出逢ったが
一番…素敵な人間だった

[…元気でカスティエル
たまにはメールしてよ?]

《ああ…きみも》

大事にしたい
本当に…きみだけは
大事にしたいよサム




新たな住み処
そこで過ごして暫くたち
やっと
サムが傍に居ない空間になれた

《…おはようバルサザール》

ーカスティエル…
ラファエルが呼んでるぜ社長室でー

《…何故?》

ー抜き打ちらしい
此処だけの話だが
大麻を所持してやがった社員が
ドジをして便所に
落としたらしい
その事で先に皆が呼ばれたよー

《…大麻…とは?》

ーおいおい…マジかよ
流石クソがつく程の真面目くんだなカスティエルは
麻薬だよー

《ほう…
ラファエルの部屋に行ってくる》

ーおまえは行く必要は
無いけどな…ー


ラファエルは何かにつけて
私を目の敵にしてきた
理由はわからないが…

ーカスティエル…
珍しく遅刻かー

《…すみません》

ーさぁ…
服を脱いで鞄を私に
渡してもらおうか…ー

《…服を?》

ー服の何処かに
隠す人間がいるらしい
さぁ…全裸になれカスティエルー

《……はい》

人間は時に醜い
悪事を他人に押し付け
他人が
今の私のように
巻き込まれる

ー………ー

《…ありますか?》

ー…無いな
何もないー

《…でしょうね》

ー…当たり前か
きみに限って
有り得ないからな…ー

《??》

身体検査と鞄検査を終え
身ぐるみを整えていると
息を切らして
社員の部下が中へと駆けて
ーカスティエルの机の中に
大麻が見つかりました!ー
そう言葉を投げた

ー……ー
《…何故?》

社長のラファエルが
私の肩を叩き
ーやられたなカスティエル
だから人間が
私は嫌いだよー
《ラ…ラファエル?
私は…大麻など…》
ーわかっている
だが…人間は信じない
見えたものしかねー
《…………》
言葉を投げた

社長のラファエルは
社員を集め
他に大麻が社内に無いかを
徹底的に調べさせ

ー…きみたちは
彼が大麻を
やっていると思うかい?
彼の…机の中にあったがー

社員に言葉を投げた
勿論社員は
ラファエルと私が思った通り
見えた事しか信じなかったが…
社長のラファエルが
ー…きみを警察へは突き出さない
何故ならきみは
大麻を所持して居ないからだ
これは濡れ衣だろう
だがカスティエルはクビだ
これは見せしめだー
社員の前で大麻を焼いた

クビだ…
解雇と言うことで
私は無職になった

《………はい》

本当に…
私が此処にいる意味が
何も無くなった


携帯の留守電を聞く日課
サムからの伝言があるからだ

…カスティエル?
なぜ連絡をしないの?
元気にしてるかい?
ああ〜…心配なんだよ
連絡をくれる?

ほぼ毎日…留守電が入っている

だが
私からはしなかった
彼の勉強の邪魔をしたくなかった
もう私は出ていって
同居人では無く他人になった身だ
家族でなければ…恋人でもない
まだ友と呼ぶには浅いだろう

邪魔をしたくなかった…

《……サム?》
ーキャス!?ああ〜…久しぶり
元気にしていたかい?
珍しいね…まだ仕事なのに
電話を?ー

何だろうか…この感覚は
まるで家に帰れたような

《…もう…疲れた》
ーえ?ー

きみの声を聞いただけで

《私は…此処に
やはり居るべきでは無いのだ》
ーちょ…ちょっとキャス!?
どうしたの?
ああ〜…すみません教授
緊急の電話で…
ああ〜…キャス?いまどこ?ー

《…私は大丈夫だ
授業を続けてくれサム…》
ー…カスティエル?ー

懐かしさに…胸が熱くなった
初めての感覚だ
やはり
きみに出逢えて良かったよサム



最初に此処に堕ちた時
私は途方にくれた
生きるのに支障はないが
いつしか…寂しくなった
孤独を感じる様になった

そんな時
私は共存を試みた
沢山観察をし真似て就職し
マンションを巣にした
そして落ち着いた頃に彼女と出逢い
職場の同僚と酒を呑み合う仲になり

《…………》

また…孤独を感じる

きみのアパートから
出なければよかったよサム…


私は巣に近い駅の改札を抜ける
そしてその足で
早くから開いている
呑み屋に向かっていた

私の後ろから
複数の足音が
ずっとついて歩いている
それに疑問を感じ振り返ると
若い派手な身なりをした少年が
立っていた

《…何かようか?》

私がそういうなり
若い派手な身なりをした
一人の少年が金をだせと
刃物を向けて言葉を投げた
そして
威嚇の為か私の肩を刃物で切りつけた

《………》

生暖かい血がトレンチコートを
赤く染めていく

ー金を出せよ!
有り金全てを出すんだよオッサン!ー
そしてまた刃物を向けて
[キャス!?]
怒鳴る少年の背後から
《!!》
まだ授業を受けている筈のサムが
駆け寄って来た

来ては駄目だサム…

駆け寄るサムに
刃物を握る少年が背中に刃物を隠し
近づいていく
《来るなッ!サム!》
止めようとした私の身体に
複数の腕が絡まり巻き付いた

不安は的中した
[!!]
ー……ー
サムが…腹を刺された
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