NL小説
□甘い誘惑
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休日、買い物へ出かけるとカップルらしき人達が
キスしているのを見かけた。
ただ、男の人が黒髪で、ある人を思い出しただけ。
(あんな風にもっと……)
日向君とのキスが嫌いな訳じゃない。
ただ、不意打ちか、誰かがいなくなったら
腰に手を回して抱きしめてくる。
(もう少し、ムードってもんがあるでしょうが!)
「何言ってんだろ…、私。」
はぁ…とため息をついて、その場を後にした。
* * * * *
翌日、あれから一向に忘れられない。
考え事してても、どうしても、あのシーンが頭を横切るのだ。
「はぁ…。」
もう何度目か分からないため息をつく。
「…コ。リコ。おい、リコ!」
「っわ!?何…?」
急に名前を呼ばれて、ビクンと肩が跳ねる。
「何度も呼んでるんだけど。」
「あ、あぁ…ごめん。」
しかも私を悩ませる(?)本人、日向君からだから余計だ。
「さっきからため息ばっかり、どうしたんだよ。」
「ううん。何でもない。」
日向君は私の顔をじっと見つめて、
「あんまり無茶するなよ。」
クシャクシャと頭を撫でて、離れて行った。
回りから冷やかしはあるが、そんなのはどうでも良かった。