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□マッサージをどうぞ
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 最近ちょっとした事でイライラする。
 慣れないマスター業務でストレスが溜まってるだけだと思うけど、



「スティング様」

「あ?」

「お疲れのご様子ですね。私、良ければマッサージいたします」

「んー、頼んでいいか?」

「はい」



 ベッド様へどうぞと言うユキノに対し、ベッドへの様付けに内心ツッコミながら横たわる。
 なるほど、マスターの部屋にベッドがあるのは仮眠用なのかもしれないと今更ながらに気が付いた。
 俯せで寝そべって眼を閉じる。

 ギシリとベッドの軋む音が聞こえて、身体の近くがユキノの体重で歪んだのが分かった。



「では、失礼します」



 ユキノがオレの背中に乗り上げる。どこか甘い匂いがぐっと強くなって、何故だか落ち着かなくなった。
 肩から肩甲骨にかけて丹念に揉みほぐされる。
 柔らかなユキノの手が強めにオレを押す度凝った部分がパキパキ音を鳴らした。



「あーーーー……」

「いかがですか?」

「きもちー…」



 というか良すぎて眠い。
 段々疲れが滲んで出ていくような感覚に思わず気の抜けた声が出る。

 頭の芯が溶けそうなくらい良すぎてヤバイ。



「スティング様、終わりましたよ」

「ん、ぁー…ありがとなユキノ。身体すっげぇ軽くなった」



 起き上がりながら肩を回すと、さっきまであった不愉快な固さが消えていた。
 ふとユキノを見れば呆けた顔をしてるのが見える。



「なんだよ」

「あ、いえ。人から感謝される事が無かったものですから……」



 お役に立てて良かったです。

 そう嬉しそうにはにかみながら口角を上げるユキノ。
 これくらいで喜ぶなよ。
 こんなことで喜ぶなら、もっと何か気が利いた事を言ってやれれば良かったのに。

 色々思った所でどうしようもないけど、何となく悔しいからユキノの髪をメチャクチャにしてやった。



 
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