田中くんはいつもけだるげ

□腕が痛い
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「…太田」



突然自分の名前を呼ばれ、声がした方を見てみると…



「…どうしたんだ、田中?」



田中が机の上に両肘をついて座ったままなんかプルプルしていた



「…さっきまで机に突っ伏して寝てたんだけど…」

「あぁ、そうだったな…」



そういえばスヤスヤとすごく気持ちよさげに寝てたな



「腕が…痺れた……」

「あー…なるほどな 。それでそんな体勢なのか」



前にもなんか似たようなことがあった気がするが、ひとまず今は考えないことにする



「やはり…強くなるしかないのか……」

「…田中は俺に一体どういうリアクションを求めているんだ?」



なんか漫画の主人公的なセリフ言ってるけど正直棒読み&無表情、しかも腕ぷるぷるさせた状態じゃ最早笑いしか誘わない

そんな俺の心情を気に掛ける様子もなく、田中はふと俺を少し羨ましいそうな目で見てきた



「…太田はこういう経験とかってなさそうだよね…」

「まぁ、机に突っ伏して寝る事自体あまりないからな」



そっか…と呟きながらじーっとこちらを見ている田中

田中もしかして…?いや、まさか…



「…田中まさか俺みたいな体つきだったらなー、とか考えてるのか?」



そう聞くと、田中は珍しく少し驚いたような顔をする



「凄いね…どうしてわかったの?もしかして太田ってエスパー?」

「いや、違うが?」



まさか予想が当たっているとは思ってもみなかったので、逆に俺の方が驚いてしまった

…しかし、動機がなんにせよ、田中でも誰かになりたいとか思うことがあるんだな…



「俺は今のままのお前でいいと思うんだが」



俺の呟きに田中はキョトンとした表情をしていたが、ふと何かを考えると、



「…うん、そうだね。太田の体格だと凄く目立ちそうだし…このままでもいいかも」

「あぁ。…ところで腕は?」

「…治ってる」



自分で気付いてなかったのか…

俺が少し呆れたような表情をしていると、徐ろに田中が席を立った



「…トイレ行ってくる」

「…まさかずっと我慢してたのか…?」

「うん」



のろのろと教室を出ていく田中の背中を見送る

あ、そういえばこの間田中トイレで寝てたらしいが大丈夫か…?いや、さっきまで寝てたんだしそれはないか




そして、昼休み明けの授業に田中が現れることはなかった

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