中編
□6.
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燻製器が直って出来上がるのを待つばかりになったキッチンでおれは「どうしたものか」と唸った。
おれの怪我はおれの責任であってウソップは悪くないし、それほど酷いものでもない。
けれどそう伝えたところでウソップが元気になるとも思えなかった。
「ヨホホホ、イチローさんどうされたんですか?」
「ああ、ブルック。牛乳か?」
「はい、ホットでお願いします」
笑っているのかいないのか骨だけだと判断しにくいが、声音からして機嫌が良さそうなブルックがキッチンに入ってきた。
おれはブルックの要望通り牛乳を鍋に入れて火にかける。
そしてそれを待つ間、ブルックに相談してみようかと口を開いた。
「ブルック何か楽しい明るい曲を弾いてくれないか。ホットミルクの後で良いからさ」
「ええそれは勿論いいですが、何かあったんですか?」
おれは少し苦笑を零して「ああ」と答えた。
「ウソップがさ、元気ないみたいなんだ」
「それはそれは、ではウソップさんを呼んでこなくては」
牛乳が湧きあがる寸前で火から下ろしカップに注いだ。
湯気と牛乳の甘い香りが辺りに広がる。
「はい、おまたせ」
「ありがとうございます。イチローさん」
ブルックは優雅な仕草でカップを傾けて一口飲んだ。
それだけならとても上品に見える。
「ウソップさんと喧嘩したわけじゃないんでしょう? どうされたんですか?」
「ああ、いや、元気がないって言って来たのはフランキーなんだけどさ。
おれが怪我したのを気にしてんじゃないのかって」
「なるほど、そういうことでしたか」
「うん、そうなら全然気にすることないのにな。
怪我も大したことないし、良い肉が入って嬉しいくらいなんだ」
ブルックはおれの話をに頷きながら優しげに笑いを零した。
「お二人ともお優しいですねぇ。ちゃんと伝えればいいと思いますよ。
一人で悩んだり、誰かが手を貸す必要もありません。二人ともお互いが心配なだけなんですから」
ブルックは牛乳を全て飲み干すとゲップを吐き出して笑った。
いつものことだが、良い事を言ったというのに全て台無しだ。
取り敢えず注意だけはしておいた。