長編

□3.
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さて、肝心の闇の魔術に対する防衛術の時間がやって来た。

「ギルデロイ・ロックハート。勲三等マーリン勲章、闇の力に対する防衛術連盟名誉会員、そして、『週刊魔女』五回連続“チャーミングスマイル賞”受賞」

キャロルは彼のことを素直に凄いと思っている。
カリスマ性があり、頭も良い、度胸もある、それに他の人の手柄を横取りするその要の忘却呪文は人の脳という複雑な部分に作用する魔法でコントロールが難しいものだ。
ただ彼には足りないものも多い。忍耐力や努力そして思慮深さ。努力をすれば実力もつくだろうに彼には全然足りていない。
レジナルドであれば、今の彼でももっとうまくプロデュースしただろうけれど、そういう知り合いも無いのだろう。

「今日は最初にちょっとしたミニテストをやろうと思います。心配は御無用ですよ! 君たちがどのくらい私の本を読んでいるか、そして覚えているかをチェックするだけですからね」

何の意味があるかもわからないテストを見た時は本当に破り捨ててやろうかと思った。
キャロルは研究好きではあるが勉強好きではない。同じことではないかと思う人もいるだろうが、キャロルにとっては全く違う。
学問として疑問に思うことを明らかにすることが重要なのであって、ロックハート氏の好みや願望などというのは、
例え将来何かの役に立つことがあると言われても微塵の興味も湧かない。

「(1、ギルデロイ・ロックハートの好きな色は何? って心底どうでもいいな)」

空欄のまま提出しようかとペンを置きかけて、それでも侮られるのも気に食わないなと思案した。

「(カレーの作り方書くとか? ベタ過ぎるか‥‥素直に書籍の私見とか‥‥)」

日本にいた時の都市伝説のような話を思い出しながら頭を捻った。そしてくるりとペンを回し一文字目を書き始めた。

「(取り敢えず思いついた順に書いていくか、この問題はさておき現代の闇の魔術は‥‥)」

闇の魔術における――魔法省の対応、政治的背景、その他攻撃魔法との比較、魔法生物保護と自然被害等
つらつらと書いていると一問一答の回答形式のはずが隅から隅まで文字を埋め尽くさんばかりになっていった。

「そこまで! それでは回答を集めてください!」

当然ながらテストは0点なのだろうけれど、なかなか実のあるレポートになったのではないだろうか。
思いついたままに書いたので推敲を重ねたいところではあるが、まともに問いに答えるよりマシだと思う。
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