中編
□7.
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夕食が終わると皆銘々に自分たちの時間を過ごす。
といってもそれは昼でも同じことなのだが。
おれは明日の仕込みや不寝番の夜食などの用意をしてから眠りにつく。
ゾロは大抵その時間はキッチンに居て寝酒を一杯飲んでから部屋に戻る。
「ほい、つまみ」
「‥‥どういう風の吹き回し?」
おれがつまみと酒瓶を一本机に置くとゾロは少し目を丸くした。
普段はつまみなど出したりしないし、酒もコップに一杯注いでから出すので当然だろう。
ゾロはかなりの酒豪で放って置くと限りなく酒を飲みまくるので宴以外は一杯だけとおれが制限を付けている。
不満そうな顔をされるものの多量摂取は身体に悪いやら、
次の島まで酒が持たないなどと言い聞かせたおかげか盗まれるということは起きていない。
では何故今日は瓶で出したのか。
「昼間の礼だ。これくらいしか出来ねぇが、何なら酌してやろうか」
おれがそう言うとゾロは澄ましたように鼻で笑って瓶に直接口を付けた。
「行儀わりぃな。飲み終わったらシンクに入れといてくれよ」
仕方がないなとおれは苦笑して夜食をトレーに乗せて準備をする。今日の不寝番はロビンだ。
熱いブラックコーヒーをポットにたっぷりと入れて保温用のカバーを被せる。
そして出て行こうとした時ゾロが呟くように何かを言った。
それが良く聞き取れずおれは首を傾げた。
「うん? 何か言ったか?」
「付き合えって言ったのよ。一人で飲むのも味気ないし」
こちらを見ずにそう言うゾロは照れているように見えて今度はおれが目を丸くした。
「じゃあ、ゆっくり飲んでてくれよ。これ、ロビンに届けてくるからよ」
そう言うとゾロは頷いたはずなのだが、おれが戻って来た時には瓶は空っぽで
「もう一本寄越せ」というゾロにおれは「今日だけ」「一本だけだからな」と何度も念を押した。