読処

□嘘つき涙
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キスされた
あのナツに…
本人曰く何にもないというそれに涙が溢れた。
ファーストキスだったのだ。
初めてがナツとなのは別に良い。だけどそのキスは何の思いも籠められていなくて…。それが辛い。
認めたくはなかったけど、ナツの事を意識していたからなおさら…。
ナツに女なんだと意識されてないと思うと悲しい。そんな事特の昔に分かっていた筈なのに…。
それなのに涙が溢れ、その姿を人に見られたくなく、ギルドから逃げ出してきた。
今は早いけどシャワーを浴びている。


浴び終わり開けるドア。
目の前には…ピンク色
いつもの様に叫ぶきにもなれず無視した。
「ルーシィ」
「何」
不機嫌に聞き返すとナツが少し怯えた。それを見ても気分は優れない。悪くなる一方
「ごめんなさい」
珍しく何も言わなくても謝ってくるナツだけどその姿に怒りはさらに沸いてきた
腹の奥底から沸き上がるそれは抑えれそうになく、溢れていく
「何で謝るの」
「傷付けたから」
「そう思うなら何であんな事したのよ!!どうでも良かった癖に!!あたしがどれだけ傷付いたのか分かってる!?」
「・・・イヤ。でも、傷付いたことは分かるから謝る。ごめん」
「良いわよ、もう。どうせ、ミラさんかハッピーに言われたから来たんでしょう」
自分で口にしたくせに傷付いてしまう。でもしょうがない。それが多分本当だから…。
ナツには、どうせあたしが泣いている意味など分からない。
「良くねぇよ」
「何がよ」
「まだお前泣いてんじゃねぇか」
「それがどうしたのよ」
「まだ言いたいことあるなら言えよ。聞くから全部」
「無いわよ。そんな事」
どうせ伝わらないもの。そんな事言ったところで無意味よ。
悲しくて涙が溢れる。止まれといくら念じてもそれは止まらない。
ああ、こんなに好きだったんだ。ナツのこと…。
報われないのに…
「嘘つくなよ」
「ついてないわよ!アンタにあたしの何が分かるって言うのよ」
「全部は分かんねぇけど、傷付いてる事ぐらい分かる。俺はルーシィが傷付いてるのは嫌なんだよ。だから、全部言え
「アンタが傷付けた癖に・・・」
「ごめん。謝るから傷付いたままいるのは止めてくれ」
何でアンタが悲しそうなのよ。止めてよ。そんな顔しないでよ。優しくしないでよ。勘違いしそうになるじゃない。
もうそんなモノしたくないのに・・・
知ってるんだから。ナツの行動にはなんの意味もないことぐらい。それなのにあたしが勝手に傷付いて悲しむの。そんなのもう嫌よ
「ルーシィ」
「何でキスしたの…」
何、聞いてるんだろう…。
傷付くだけだって分かってるのに
「それは…みんながからかうからカッと来てつい」
ほらね。それだけの理由。
「あたしは…アンタの事が」
駄目だ、これだけは言ったら駄目
なのに体は言うこと聞かなくて…
「好きなのに…。簡単に気持ちのないキスなんてしないでよ」
言ってしまった。
言うつもりもなかったあたしの気持ち。言ってどうなるの?どうにもならないのに…
気まずくなるだけじゃない。
バカだな、あたし
「ルーシィ」
バカだな…
ナツを困らせてまで何がやりたいんだろう
「それ、ホントか?」
「・・・」
なにか言わないといけないのに、言葉は喉の奥につまり出てこない。
涙しか出てこなかった。
「ルーシィ…。ホントなんだな」
頷くことも出来ずに、ナツから視線を反らした。
終わったんだなと思う。
明日からはナツにどういう顔をして良いのか分からない…
まともには接することが出来ない
どうしよう…
現実逃避として明日の事に目を向けていたら、誰かが抱き付いてきた。
誰かなんて1人しかいるわけなくて…ナツ
「ルーシィ」
「何よ」
「こっち向けよ」
言われてもナツを見ることが出来ずに下を向いた。暫くするとしびれを切らしたナツに無理矢理、視線をあげらされてしまう。
思った以上に至近距離にあったナツの顔。今更ながらに、酷い顔をしていることを思い出し慌てた。あまりそんな顔を見られるのはいやだ。特にナツには…
自分のその考えに自虐的な笑みが浮かんだ。まだ好きなのだナツの事が。
きっとこれから降られると言うのに
もう一度言ってみようか?
降られる前に最後に一度だけ…
「す」
決意を決めて言うよりも前に、ナツにより口を封じられた。
すぐ近くにあるナツの顔。そして唇に押し付けられた柔らかな感触。
それは間違いなくキスでやっと止まりかけていた涙がまた溢れた。
離される唇。蕩けるように見つめてくるナツ
「好きだぞ」
それを言ったのは自分ではなかった。
ナツだった。驚きにさらに重ねられる言葉。「好きだ、ルーシィ。愛してる」
続けられるのは言葉ではなく。三度めのキス
「好きだ。だから傷付いたんなら何でも言えよ。俺が守るから」
言われた言葉への答えはなかった。
ルーシィは思いもしなかった幸せに、更なる涙を溢していた。

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