Novels 短編
□餞の詩
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家に帰る途中に公園があるんだ。
よくちぃちゃんと寄り道しては、ここでたわいもない話をした。
この場所で泣いて
この場所で笑って
怒って…
皆と別れた俺はいつの間にかその公園に来ていて、酔い覚ましにと自販機で缶コーヒーを買ってベンチに腰掛けた。
ポケットからタバコを出して火をつける、、、
ふと、空を見上げるとさっきと同じ真っ暗闇。
「……俺には、、見えねぇか…」
さっき聞いたゾロの言葉が頭の中で繰り返される。
フーッと煙を吐き出して、眼を閉じてみる。
ー あいつな、、、ちぃは、付き合っているやつがいるそうだ。ー
ー そいつと今住んでいるらしくて、、、結婚も考えているらしい… ー
それからはあんまり覚えちゃいねぇ。
ただ心配そうに俺を見送るあいつらを後にした。
結婚………か。
彼氏……そらぁいるよな。
別れてどんくらいたったと思ってる。
俺は…ちぃちゃんが幸せならそれで……
それだけで……
ギリっ…
握った拳に汗が滲む。
頭では分かっていても、想いは努力とは正反対だ。
タバコの火なんて気にせず前かがみになった。
俺は…今でも…
君を…、、、
なぁ。ちぃちゃん
ちぃちゃん
ちぃちゃん…
どこにいる?
どこにいんだ……?
会いたい…
会いてぇよ…
ゾロに事実を知らされるさっきまで、
そして今も俺は君を想わなかった日なんてない。
でも、
……祝福しなきゃな…
餞に
餞になにを送ろうか
辛い想いと裏腹に君の幸せを祝福する俺がいる。
餞といえば詩だよな…
そういえばよくちぃちゃんと聞いていた詩がある。
たしか…ラブソングだ。
俺はあることに思い出して、カバンの中からウォークマンを取り出した。
確か…まだあったはずだよな。
何曲もの中から君との思い出の詩を探し出すと、ゆっくりと再生ボタンを押した。
耳に懐かしいメロディが入り込む。
よく二人で口ずさんだ詩だ。
あの頃、俺は本当に幸せだった。
泣いたり、笑ったり怒ったりするような
そんな在り来たりな幸せを、二人で話したことがある。
この詩の様な幸せを…