Novels 短編

□ひとりよがり
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「はぁ…っ、あッ、…んんッ…」



「…はァッ、…く、……はぁ」




いつだって、交わらないこの気持ちは----









「ひとりよがり」









揺れる度に落ちていく汗さえも愛しくなるほどに、目の前の女に俺は心底惚れている。


二本の指で掻き回して、こいつの敏感な部分にどんどん侵入していく。



「ぁ…っ…やぁ、ぁあっ…」



くちゅくちゅと鳴る水音に合わせて、甘い声を漏らすその唇に喰らい付けばたまらない感覚が襲ってくる。



もう何度、身体を重ねあっただろうか。



抱く度に感度がよくなっていくこいつに、どんどん溺れていくのは俺の方だ。





「ン………ね、ぇ……も、入れて…」


「ぁ、?…まだもうちょっといいだろが」


しつこく敏感な部分に吸い付くように前戯する俺にせがむような顔でこっちを見てくる。


さっきから敏感なそれは硬くなって俺の舌を押し返していて、


ざらりと舐め上げる度に身体をビクリと跳ね上げた。


こいつが感じていることが分かると尚更止められねェ…


そんな俺に痺れを切らしたのか、珍しくこいつから甘い声で懇願してきた。



「や……だぁ…。ね…お願い」


「………」


ヒクヒクと動くそこに今すぐにでも入り込みたいのは俺の方だ。


甘く濡れた切ない瞳で、見つめられるだけで頭は狂いそうになる。



だがいつも、
焦らして、焦らして……




自分の衝動を抑えてまで求められたくなる。


愛してやまないこいつの全てに飲み込まれたくてたまらないんだ。





「挿れて……はや…っ…んん!!」


女が全部言い終わらないうちに、
反り返った自分の熱いものを押し込んだ。


「ああぁっ---!…んんっ」


いきなりの快感に、身体を逸らして腰を浮かせたかとおもうと


そのままピクピクと震わせて、あっというまに果ててしまった。



「…ちぃ……気持ちいいか?」


「やっ……そんなんじゃ…あっ!」


「…言えよ…どこが気持ちいいんだ?」

「んん…」


「…言わねぇとやめちまうぞ」



なかなか答えを言わないから俺の方が余裕がなくなる。



俺を求めろ。俺を求めろ。



動きたくてたまらねェ………



そんな熱くなった視線を火照った顔に向けたとき、潤んだ瞳がやけに綺麗でこのまま腕の中に閉じ込めたい衝動に駆られる。



「……んん…な、か…」


「はぁ…、……ん?」


「あたしの中……すごく気持ちいいの」


「……」


「ね、…もっと…突いて…」


「っ!!!」



限界なんかとっくに超えていた俺は、そのまま身体の横に手を突いて、想いのままに腰を振った。



「あァっ…やぁ、あっ…あん…」



パンパンと部屋に響く音に興奮が増す。


乱れたこいつから熱い吐息が出る度に優越感に浸る。


今、この女を抱いているのは俺なんだ……


己を止めることなんてもうできるわけがない。

動きを早めれば早めるほど、
ちぃが俺を締め付けて離さない。


快感を与えればせがむように腰を動かしてくる。


キスをすれば、もっとと言わんばかりに舌を絡めてくる。


頭を撫でると、背中に腕を回してしがみついてくる。


そんな彼女が愛しくてたまらない…






……なのに






「…ん…んん…はぁ」


「…ちぃ…」


「あぁっ……や……ん…」


「ちぃ…」


「ぁんっ…ぁ、あっ…」








なのになんで…










「……………サンジ…」


「……っ、」


「サンジ、…もっと…もっと……ぁあっ」






なのに、なんでなんだ。




なんで、この愛しい口から出る名前は俺じゃないんだろう。



互いの視線は合っているはずなのに、



なんで瞳の奥に…




コックがいるんだよ…



叶わないコックとの恋で泣いてるこいつからはよく相談を受けていた。


あいつからの愛を欲するがゆえ、いつだって孤独に怯えていた。


コックを想って泣くその瞳が俺に訴えかけてたのかは今は分からない。


ただ……手を出したのは俺の方だ。




いつだって交わることはなかった。


どんなに身体だけ繋いでも心は遠くにあった。



やめちまえばどれほど楽だろうか


もし、想い続けるのをやめれたら…




「……」


「はぁ……ん、…ゾ、ロ?」


「……」


「どうしたの?……ゾロ?」


「…っ」



たった一言。




ただ名前を呼ばれただけで、すぐに引き戻される。




止まることのない想いを表すかのように、腰の動きを速める。



彼女の恋を見つめながら、寄り添う俺もまた









「ひとりよがり」








人は愛することをやめるなんて出来やしないのだから。







END

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