black and white 本編


□09.不幸な女のイノセンス
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「アクマが退いた?」
「ええ」「うん」

日が暮れて、やっとミランダの家に到着したゆめとアレン。
先程の不可解な出来事を、リナリーにかいつまんで話す。

「ちょっと様子が変でした。僕らのこと殺す気満々だったのに。一応この辺り見回りましたけど」

ゆめに手当てを受けながらアレンが言う。
消毒をしながらゆめが言った。

「にしてもアレンくん、掠っただけでよかったね」
「はい、ゆめのお陰です」

ゆめが撃っていなければ・・・と、アレンは椅子が丸焦げになったのを思い出したのかぶるっと身震いをする。

「いてて」
「あ、コラ。ティム、つつかないの」

傷口をつつくティムキャンピーを、むぎゅりと掴む。

(あ、ふにふにしてる。可愛いー!)

「でもよかった。レベル2を2人であんなに相手にするのは危険だもの。アレンくんは、新しい銃刀器型の武器、体に負担がかかってまだあんまり長い時間使えないんでしょ?」

心配そうに言うリナリーに、アレンが答える。

「そうなんですよねー・・・。結構体力作ってるんだけどなあ」
「でも、ちょっと体大きくなったねェ」
「うんうん、リナリーの言う通りだね」
「ホント!?」

リナリーに続いてゆめも褒めると、アレンは嬉しそうに笑った。

「・・・で、何してんですかミランダさん」

ガタガタと震えながら置時計を磨いているミランダに、アレンが言う。

「私達とアクマのこと説明してから、ずっと動かなくなっちゃったの」

「私ホントに何も知らないのよ・・・。この街が勝手におかしくなったの。何で私が狙われなきゃいけないの・・・?私が何したってのよぉぉ〜〜〜。もう嫌もう何もかもイヤぁぁ〜〜〜」

「く、暗い・・・」
「っていうか暗すぎ・・・」
「ずっとああなの」

ずーん、と効果音が出そうなほど暗いミランダに、3人揃って苦笑する。

「私・・・は何も出来ないの!貴方達すごい力持った人達なんでしょ!?だったら貴方達が早くこの街を助けてよ」

「分かってますよ、ミランダさん」

「でも、その為にはミランダさんの助けがいるんです。貴女は街の奇怪と何かで関係している。僕達に手を貸してください」

ゆめはミランダに お願い、と手をパチンと合わせて言った。

「明日に戻りましょう」

コチ コチ コチ コチン!

時計の針が12時を指した。

「ミ、ミランダさん?」

その瞬間、ミランダは何かに取り憑かれたかのように急に立ち上がると、ベッドに入って寝てしまった。

「寝るんですか!?」
「何か様子が変ね・・・。! ゆめ、アレンくん!」

何かに気が付いた様子のリナリーの声に後ろを振り向く。
するとそこは、ミランダが大切にしていた時計を中心に様々な形をした時計の模様で埋め尽くされていた。

「な、何だこれ!?」
「まさか・・・あの時計・・・?」

(・・・始まる!)

ゆめが心の中で呟いたのと同時に、24時を知らせるゴーンという音が街全体を包み込んだ。
それから時計の針はくるくると逆回転を始めた。

「きゃっ」
「つかまって、ゆめ、リナリー」

ミランダの大きな時計に、今日あった出来事が時計の模様に映し出されながら次々と吸い込まれてゆく。

「今日の時間を吸ってるのか・・・」

全ての時計の模様が吸い込まれ、時計の針が7時を指したとき、

パアアッ

辺りが明るくなるのがわかった。

「!! 朝ぁ〜!!?」

(漫画では見たことあったけど、実際に体験してみると、その、何て言うか・・・)

「き、気分悪い・・・」
「ゆめ、大丈夫・・・?」

げふっ、と声を漏らすゆめを気遣って背中を摩ってあげるリナリー。

「あら・・・?私、いつの間にベッドに・・・」
「「「・・・・・・」」」

むくりと起き上がって首を傾げるミランダに、3人はただただ沈黙するばかりだった。


――――――・・・


「スゲー、今のぉ」

ミランダの部屋とは別の場所で、今の光景を見ていた影が2人。
ロードと呼ばれた少女と、先程ゆめ達が相手をしたアクマだ。

「ロード様、エクソシストを放っておいてよいのですか?」
「いいんじゃん?あいつらがイノセンスを手に入れるまではねぇ」

心配そうなアクマをよそに、のんびりした口調で答えるロード。

(やっと会えるねぇ・・・)

ゆめを見やりながら、ロードはそっと笑みを浮かべた。


――――――・・・
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