black and white 本編


□07.黒の教団壊滅事件
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「遅くなっちゃいましたね」
「そうだね・・・」

マテールでの任務終了後、嵐の中やっとのことで本部へと帰ってきた。

「早いとこ報告書片付けて寝ちゃお・・・」

ふああ、と小さく欠伸をしながらゆめが言う。
それから教団の門を開けた途端、ゆめたちは一瞬言葉を失った。

「「リ、リナリー!?」」

何故か上から降ってきたリナリーに、慌てて駆け寄る。
どうやら意識を失っているようだ。

「も、戻ったか。2人とも・・・」

その声に顔を上げると、困り果てた顔をしたリーバーがいた。

「リーバー班長!」
「そのキズ、何かあったんですか!?」
「・・・逃げろ、コムリンが来る」

リーバーのその言葉に、ゆめは自身の顔がサッと青ざめるのが分かった。

(しまった・・・かんっぜんに忘れてた!)

マテールでの激務で疲れ果て、コムリンのことなどまるで頭になかった。

「コムリン?」

アレンがきょとりと首を傾げた丁度そのとき、ドカン!という大きな音を立ててひとつの巨大な機械が現れた。

「来たぁ」
「な、何アレ!?」
「くっそ、なんて足の速い奴だ」

『発・・・見!』

「逃げろ!こいつはエクソシストを狙ってる!!」

リーバーの忠告と同時に、コムリンが動き出した。

『手術ダー!!』
「うわわわっ 追ってくる!追ってくる!!」

壁を破壊しながら予想以上のスピードで突き進んでくるコムリン。
ゆめらもそれに負けじと全速力で逃げる。

「リーバーさん!ワケがわかりません!!」

リナリーを背負って走るアレンが、リーバーに説明を求めた。

「ウム。あれはだな、コムイ室長が造った万能ロボ『コムリン』つって・・・見ての通り暴走してる!」
「何で!?」
「あれはほんの30分前・・・」

険しい顔つきで、リーバーがこれまでの経緯を語り始めた。

――――――・・・

あれはほんの30分前、俺達が相変わらず給料にならない残業をしていた時だった。

「転職しようかな…」
「俺このまま眠れんなら一生目覚めなくていいやぁ」
「終わらねぇ・・・このまま一生終わらねぇんじゃねぇかな・・・」
「諦めんなよ、多分終わるさ・・・」

大量の資料の山に埋もれかけながら、口々にそう零す科学班の面々。

「コーヒー飲む人ー?」
「「「「はーい」」」」

そこにコーヒーを持ってリナリーがやってきた丁度そのとき、

「おーい、みんな起きてるー?見て見て」

ドカーン、ガラガラと騒音をたてながら、科学班室長であるコムイがやってきた。

「ジャーン♪我が科学班の救世主こと『コムリンU』でーす!!」

凄いでしょ、と言うコムイの後ろには、壁を突き破ってきた巨大な機械。

「室長ぉ、何スかそのムダにごっついロボは・・・」
「だから、コムリンだってば。たった今やっと完成したんだよー」

そう言って、コムイはコムリンの解説に移った。

「僕の頭脳と人格を完全にコピーした、イノセンス開発専用の万能ロボさ♪あらゆる資料の解析はもちろん、対AKUMA武器の修理・適合者のケアサポートも行うんだ。まさにもう一人の僕!!これで仕事が楽になるぞー!!」

「室長ぉ〜」
「マジですかー」
「敬いなさい。褒めたたえなさい」

目を輝かせる科学班一同に、コムイが胸を張る。

そんな中、コムリンがリナリーの持っていたコーヒーをおもむろに取り、ぐびりと飲んだ。

「それ・・・兄さんのコーヒー・・・。兄さん、コムリンってコーヒー飲めるの?」
「ハハハハハハハハ。何言ってるんだ、リナリー。いくら僕にそっくりだと言っても、コムリンはロボットだよ?コーヒーは・・・飲んだの・・・?」

恐る恐る尋ねるコムイ。そして、次の瞬間

フッ プスッ

「リナリー!!」

コムリンの持つ麻酔針が刺さり、リナリーが倒れ込んだ。

『私・・・は・・・コム・・・リン。エクソシスト、強く・・・する・・・』
「コ・・・コムリン?」

明らかに様子がおかしいコムリンに、動揺する一同。

『この女・・・はエクソ・・・シスト。この女をマッチョに改良手術すべし!!』

コムリンの放ったその言葉に、リナリーがマッチョになった姿を思い浮かべてから、みんな一斉に叫んだ。

「「「「何ぃ─────!!!」」」」

――――――・・・

「・・・と、いうワケだ。悪いな、こんな理由で」

(アホくさっ!!)

誰も口には出さなかったが、思っていることは皆同じだろう。

「はあぁ〜。ラクになりたいなんて思ったバチかな」
「「え?」」
「お前たちエクソシストや探索部隊は命懸けで戦場に行ってるってのにさ。・・・悪いな」

リーバーはそう言ってから、こちらに向き直って言った。

「おかえり」

やっぱり、『おかえり』という言葉は、何度言われても嬉しい。
しかし、それと同時に母の『おかえり』という声が思い出されてちくりと胸が痛んだが、ゆめは気付かないふりをした。

「おおーい、無事かー!!」

丁度そのとき、逆三角形型のエレベーターが現れた。
そこにはコムイを含む、科学班の面々が乗っていた。

「あ、アレン達も帰ってきたの?こっち来い、早く・・・」
「リナリィー、まだスリムかいー!?」

ドガンッ!

「来たぁ!!」

またもや壁を突き破ってきたコムリンに、ゆめたちは軽く吹き飛ばされる。

「科学班をナメんなよぉ!!」

丁度そのとき、ジョニーが大砲を持ち出してコムリンに向けた。
が、発泡する寸前でコムイに阻止された。

「ボクのコムリンを撃つなぁ!!!」

そのせいで大砲が乱射されて、こちらにも飛んできた。

「わっ!」
「何してんだお前ら!!殺す気か!!」
「は、反逆者がいて・・・」

反逆者というレッテルを貼られたコムイは、エレベーターの上で捕らえられていた。
それでも尚、コムリンに近付いてから言った。

「コムリン・・・、アレンくんの対アクマ武器が損傷してるんだって。治してあげなさい」
「・・・え゛?」

顔を引き攣らせるアレンをじっと見据えてから、コムリンは言った。

『損・・・傷・・・。優先順位設定!アレン・ウォーカー重症により、最優先に処置すべし!ついでにゆめ・芹澤も手術だー!!!』

「! わっ」
「え゛!?」

コムリンに足を引っ張られて、アレンとゆめはズルズルと引き摺(ズ)られてゆく。

「アレン!ゆめ!」

アレンが思わず手放したリナリーを支えながら、リーバーが叫んだがもう遅い。

『アレンとゆめを手術室へ連行――!!』

手術室と思しき部屋に徐々に近付いてゆく。

「ぎゃあああ 何あの入口!?」
「なななな何でわたしまでっ!?」

「さあ、リーバー班長!コムリンがエサに喰いついてるスキにリナリーをこっちへ!!」
「あんたはどこまで鬼畜なんだ!」

ゆめは、そんなコムイに小さな殺意を覚えながらも手術室へと連れられて行った。
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