black and white 本編
□06.子守唄を聞かせて
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『いいねぇ。青い空、エメラルドグリーンの海。ベルファヴォーレイタリアーン♪』
受話器から漏れ聞こえるのは黒の教団科学班室長コムイ・リーの呑気な声。
電話を受けているのは、この病室の主である神田だ。
ゆめはその隣で椅子に腰掛けている。
「文句はアイツに言えよ!つか、コムイ!俺、アイツと合わねェ」
そう言いながら点滴の針を勢いよく引き抜き、頬に貼られたガーゼを剥がした。
「ちょっとちょっと、何してんだい!?」
その時、丁度ナースに連れられて病室に入ってきた医師が、神田のそんな行為を見て声を上げた。
だが、当の神田は一切聞く耳を持たずに包帯を解いてから言った。
「帰る。金はそこに請求してくれ」
トマがすっと名刺を差し出した。
「ダメダメ!あなた全治5ヶ月の重症患者!!」
「治った」
「そんなわけないでしょ!!」
そんな声はまるで聞こえないかのように、神田は解いた包帯を投げつけた。
「世話になった」
明らかに、これはお世話になった人に対する態度ではない、とゆめは思う。
「ゆめ、行くぞ」
「はいっ」
さっさと病室を出てゆく神田に元気良く返事をする。
それから最後に医師たちに謝罪と感謝の言葉を残して、神田の後に続いた。
『今回の怪我は時間がかかったね、神田くん』
「でも治った」
『でも時間がかかってきたってことは、ガタがきはじめてるってことだ。測り間違えちゃいけないよ・・・君の命の残量を』
「・・・で、何の用だ。イタ電なら切るぞ」
『違いますぅ〜!次の任務の話!』
暫くコムイから次の任務についての説明を受けてから、神田がゆめに受話器を渡した。
『――――――・・・という訳だから。大丈夫かい?』
「はい、わかりました。大丈夫です」
神田から電話を代わったゆめは、コムイにこの後の説明を受けた。
「・・・はい。それじゃあ、失礼しまーす」
最後にそう言ってから、ガチャリと受話器を置いた。
「これからアレンくんと一緒に帰還しろって」
神田に電話の内容を話しながら、ゆめたちはアレンのいるマテールへと向かった。