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□誰にでもスキだらけ 華視点
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「うーん、ここがこうだから・・・」

部屋に我が皇子の唸り声が響く。

今日は午前中が晴明様との修行で、午後は僕との勉強だ。

我が皇子の家でやっているから下には我が皇子の御母堂がいるけど、晴明様や主神言殿が闇皇宮にいる今この部屋には僕と我が皇子の二人だけだ。


二人きり。
ドク、と少し脈が速くなった気がした。

最近、僕はおかしい。

突然、脈が速くなったかと思うと、胸が痛くなったり。

それも何故か、我が皇子といる時に限って。

破に相談したら、凄く優しい笑みで
『今夜はお赤飯ですね』
と言われ、その日は軽くトラウマになる位のお赤飯を食べさせられた。

もう破には絶対相談しない、と決意したのは記憶に新しい。

『華といると、落ち着くって言うか。うーん、お母さんみたいな』

(何それ、ムカつく。)

・・・いや、そうじゃなくて。

ムカツクってなんだ、ムカツクって。

別にいいじゃないか、それだけ信頼されているということだし。

(それって男として見られてないってことでしょ)

だから、そうじゃなくて。

・・・大体!我が皇子は誰にでも隙を見せ過ぎだと思う。

そんなんだから東の変態とか、変な奴に目を付けられるんだよ。

(まったく・・・目が離せない)

違うってば!いや、それは・・・違わないけど。

ほら、我が皇子ってそそっかしいし、
こう・・・守ってあげたくなるというか。

そう、守護者として!これは十二式神として、当然の事であって・・・。

だから別に、変な意味ではない。断じて。

って僕は一体誰に説明しているんだ。

自分の事なのに、意味が分からない。

ハァ、と短く溜息を吐けば「ゴメン、華」

と申し訳なさそうな我が皇子の声が。


「え?」

「俺、物覚えが悪くて」

しまった。

どうやら僕の溜息が我が皇子を誤解させてしまったらしい。

何か言わなければ、と口を開いたはいいが。

「別に。これも僕の仕事だし、我が皇子の物覚えの悪さは今に始まったことじゃないでしょ」

とっさに出てきた言葉は存外そっけなくて。

しゅんとした我が皇子に罪悪感が募る。

「う゛っ・・・じゃあ何で、最近元気が無いんだよ」

我が皇子、気づいてたのか。

普段鈍いくせに、こんな時だけ鋭いとか反則だと思う。

「・・・大学の研究で昨日も徹夜だったから、少し寝不足なだけだよ。ほら、そこスペルミス」

「えっ、どこ?・・・いや、だってさ・・・」

動揺を隠す様にスペルミスを指摘するも、我が皇子はまだ何か言いたそうに口をモゴモゴさせている。

「・・・ここだよ」

「あ、ここか・・・なぁ、華」

我が皇子が一旦言葉を切って、僕を見上げる。

真剣な瞳に射抜かれて、ドク。とまた少し脈が速くなった気がした。

「・・・何、我が皇子」




「何かあったら言えよ?そりゃあ華は俺よりもしっかりしてるけどさ。たまには頼れって」

ポンポン。いつも僕が我が皇子にしているように頭を撫でたと思うと、華の髪って柔らかいよなぁ、と呑気な声が。

そして何も無かったかの様に再び目線を問題集に戻すと、またの「うーん」という唸り声が部屋に響いた。

・・・いや、冷静に分析したけど、今、頭を、撫で・・・!

触れられた部分が熱い、とか。気のせいだ、気のせい。

普段されない事をされたから、その、少し動揺しているだけで。







ああもう、ホントに・・・!

調子を整える様に息を吸い込む。

そして、

「我が皇子」

「んー?」








「・・・バカ」

何?とこっちを向いた我が皇子に軽くデコピンをお見舞いしてやると「へ?華?」僕の行動に、困惑した声が上がった。

その驚いた顔がなんだかおかしくて。

ちょっとは仕返しが出来たかな?と、らしくもなく笑みが零れた。





無防備なきみに「 」をする。

1、誰にでもスキだらけ

(僕ばかりが調子を狂わされて。本当、バカみたい。)
 

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