□曖昧
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若林なんかの事は忘れて数日が経った



いつものように虚しく・・・もないが

一人で校舎を出て校門に向かう


「....あ」


目の前にボールが転がってきた


サッカーボール.....


サッカー部のが転がってきたんだろうけど周囲を見ても誰も取りに来る気配がない


「....ちょっとぐらいならいいよね」


軽くリフティングをする

サッカーは好きだ

でも学校でサッカーの話なんてできないし少し寂しい


「へえ意外とうまいんだな」

「...?!」

リフティングに集中していた私は突然声をかけられて吃驚してしまった

ボールが足元から離れる

そのボールを蹴ってまたリフティングする

____のは若林


「まぁ俺からしたらまだまだ甘いけどな」

「そりゃぁ全国大会優勝の若林源三とはレベルが違います」

「...お前この間勝手に帰っただろ」

「この間...?」

「門出た所で会っただろ」

「あー...会ったかもね」

「何も言わずにいなくなってただろお前」

数日前の事を思い出す

「あんな女子の集団に囲まれてたしもう話す事も無かったから」

「....俺は話したい事が沢山あったんだが?」

「はい?」

「お前の事はよく見かけるからな」

「私は若林の事見かけた覚えがほとんどないんだけど」

「随分と冷たい奴だな」

「別に若林とは親密な関係じゃないですからね、もう帰るから」

「ちょ....っと待てよ」

「何?ボールは返したでしょう?」

「今度俺の家に来い」

「はい?」

若林がこっちに近づいてくる

「俺の家、分かるな?」

「あの馬鹿みたいにデカい家でしょ知ってるわよ」

「それならいい、今度の日曜に来いよ」

「はぁっ?!!なんで私が...!!」

「サッカー、やろうぜ?」

「....えっ」

「俺はゴールキーパー、丁度いいだろ」

「いやそうじゃなくて....」

確かにサッカーを誰かと出来るというのは嬉しい事だけど

その相手が若林!?

「どうせ暇なんだろ、来いよな」

「どうせって....失礼な」

「...それに」

「?」

「....俺はもっと名前の事を知りたいんだ」

いきなり顔を近づけてきて私の耳元で囁く

「ッ...!」

「これから親密な関係になっていこうぜ?名前」

低く落ち着きのある声で言われる

不覚にも少し

ときめいてしまう



今までの曖昧な関係が

深いものになる、その日は近い______










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