べるぜバブ二次創作

□う●こごと愛せ
1ページ/1ページ

あと2分で日付が変わる。

普通の人には何の味気もない日かもしれない。
言うなれば、ポッキーの日とレオナルド・ディカプリオ、ロロノア・ゾロ、あと声優の鈴木達央の誕生日くらいだ。
ちなみになんで俺が鈴木達央を知っているかというと、ほのかが最近たっつんたっつんうるさいから。どうやら腐った道に走り出してしまったらしい。お兄ちゃんは複雑です。

あとNEWSの手越くんとかスーパーロボット大戦の寺田さんとか、ボッスンとか、けいおんのあずにゃんとか。あ、吉幾三だ。ちなみにスーパーロボット大戦で主人公を11月11日生まれのB型にすると精神コマンドが強力になるんだぜ。


こんなことを考える日を迎えるようになって、早21年。
ハタチ最後の日か、なんて考える暇もなく今日が終わってしまった。

0時ぴったりに、誰かからLINEとか来ないかなぁ。プレゼントと一緒に告白されちゃったりして。そんで可愛い女の子と付き合いたいなぁ。男鹿いるけど。


そうしている間に刻々と時間は過ぎていく。

ふと昔のことを思い出した。



あれは確か小5のとき。
「ねえねえ男鹿!俺な!今日誕生日なんだぜ!」
「ふーん」
「ふーんってなんだよ!人の誕生日なんだと思ってんだ!」

小6のとき。
「俺今日誕生日なんだ」
「コロッケよこせよ」

中1のとき。
「今日俺誕生日なんだけど」
「つーかなに?お前に誕生日とかあったの?」

中2のとき。
「なープレゼントよこせよー」
「仕方ねぇな。ほら。俺のとっておきのTシャツだ」
あ、そうだ。これが〆鯖のTシャツだ。

中3のとき。
俺受験勉強してたから会ってねーな。

高1のとき。
ノータッチだったわ…だけどラミアがケーキくれた…

高2から……覚えてない。

おい、男鹿よ。
お前……え?なに?
お前俺の親友兼恋人じゃなかった?
嘘だろ……信じらんねえ…
改めて振り返ってこれって…おいどういうこと!?男鹿!!
恋人の誕生日!!ねぇ!恋人の誕生日だよ!?
これ今年もこのパターンだよな!?きっと!


マジあいつ信じらんねえ……
涙出てきそ。

はぁ…今年もこんなで終わるんだろうな。はぁ。
まぁいいけど。こんな扱いには正直もう慣れてしまった。
高校時代のロリコンだのホモだのクズだのゴミだのその他諸々の悲しいあだ名のせいで。

俺もしかして一生童貞捨てずに終わるのかなぁ。
うわ。切なすぎだろそれ。
一応男鹿と付き合ってるから浮気になっちゃうし、別れる気もねぇしなぁ。


んー、と唸っていたら既に長針は0時3分を指していた。
結局0時ぴったりにLINEもメールも来なかった。


俺よ。誕生日おめでとう。
いつか童貞捨てような!
あと誰に祝われなくても泣くな!


一人暮らしだから、誰かが好物を作って待ってくれることもない。いつも通り大学へ行っても多分祝ってもらえないだろう。帰ってきても暖かい部屋も何もない。

つら。マジつらたんじゃん……泣くわ。彼女くれよ。

21で童貞とか…ないわ。俺結構なイケメンだよ!?人当たりもいい方だし!!頭だって大分いいよ!?あーもー!なんで俺の人生ってこんな残念なの!?


いつもはチカチカとうるさい携帯のイルミネーションもすっかり静かに鳴り止んでしまっている。

「……せめてお前くらいは」

わかってる。
あいつにそんなことを求めた方が負けだと。
男鹿には何を求めたって返って来るはずがないのだ。
明日も早い。早く寝てしまえ。
なに。もし顔を見合わせたらパンチの一発でもかましてやればいいじゃないか。例え威力なんかない軟弱パンチでも。







***



え!?え!?え!?
えええええええええ!?

嘘だろおい……


いや、ほんとに。


「信じらんねえ……」

信じられない量のプレゼントと祝いの言葉をもらった。
たくさんの袋や箱を両手に抱えながら、ひとつひとつ振り返る。

『古市!おめでと!』
『さんきゅー!!』
『なに?誕生日?おめでとさん』
『おう!ありがと!』
『古市くん誕生日なの?おめでとう!!』
『わああありがとう!!』
みたいな。

正直ニヤニヤが止まらない。
だって一歩進む度に祝われるんだもん。

誕生日ってこんなだったのかなぁ。
男鹿と出会う前を思い出せば、確かにこんな感じだったかもしれない。
小学生の頃なんかクラスの中でどんどん連鎖していって、ちょっとしたヒーローだった。
家に帰っても、母とほのかが手作りしたというケーキや、好物ばかりが並んだ。
誕生日という響きが、全てをわくわくさせるものだった。





たぶん今俺はやっと、普通の人間に戻れたんだろう。
いや、俺は至って普通の人間なんだが、周りが個性派すぎたよな。
本当に漫画のような高校生活を送っていたと思う。

ああなることは、きっと運命で。
ああなるべきだったのだ。
例え、ロリコンだと言われても、監禁されても、ティッシュ鼻に詰めても、心臓を引っこ抜かれても、魂を割られても。
そうなることが、そうすることが、俺の生きる道だ。

…なんかすげえ恥ずかしいな。

やっぱ男鹿って大事なんだよなぁ。
こんな風に今は離れていても、やっぱり男鹿のことばっか。

それがまた悔しい。
なんで俺ばっか男鹿のこと考えなきゃなんねえんだ。

今あいつは、どんな風に生きてるんだろうか。
とか。

全く会わない訳じゃないんだ。
縁切った、とか。そういうのじゃなくて。
まぁ、昔一緒に居すぎたせいもあるかもしれないけど。
でもやっぱり、男鹿のいない生活とか。

きついんだよなぁ。


たまにLINEとかはしてみる。
帰ったら男鹿がいきなり部屋に居たこともあった。
俺も遊びに行ったりしてた。
誕生日にはちゃんと祝ってあげたし。
男鹿のあのときの顔なんか、本当。
ずるいんだって。

こんなゆるい関係でいいんだろうか。
付き合ってるのか付き合ってないのかもよくわかんない。
そもそも男鹿が今どんな生活をしてるのかも謎だ。
俺はこうやって大学生してるけど、男鹿はもう就職とかしちゃってるのかもしれないし。いや、男鹿を雇ってくれるとこなんてあるか?

俺としては、まぁどうにかしたいわけで。
男鹿に別れたいって言われたら勿論別れるしかないけど。
男同士なら男同士なりに、なんとかけじめをつけたいもんだ。

なぁ、お前は今どうしてる?
俺をどう思ってる?

昔は一心同体だったはずだ。
俺はあいつの考えてることなら大体わかったし、あいつだって俺の考えてることなら大体わかってた。

ずっと変わらない関係でいられると思ってたけど、そうもいかないのかな。
俺は今でもお前のこと、ちゃんと好きなんだけど。

うわ。恥ずかし。俺超恥ずかしいしキモいしなんなの。マジやめろよ引くわー。


久しぶりにコロッケでも買って帰ろうかな。


なんかそうしたら男鹿のこととか、全部なんとかなる気がするっていうか。
会いたい、なんて女々しい感情を持ってしまった自分が悔しくて。
あーもうなんか、あいつ本当ムカつくなぁ。




***


ガチャ

「ただいま」

小さく言って靴を脱ぐ。
今日はなんだかんだで疲れた。

ん?もしかして俺電気つけっぱで出ちゃった?
うわー最悪…


「男鹿!?」
「おう」
「っていきなりかよ!」
「暇だったからな」
「なに。どうした?」
「別に理由はねえけど。ただ腹減ったから飯」
「コロッケならあるけど」
「古市、ナイスだ」
「だろ?」

袋の中からコロッケを取り出す。
懐かしい匂いがする。

「チンする?」
「あーやんなくていい」
「ん」
「サンキュ」
「おう。いただきます」
「やっぱうめぇなーこれ」
「な。懐かし」

いつまでも変わらない味のコロッケを食べてると、いろいろ思い出してきた。
なんか感慨深いなぁ。

「男鹿、うまい?」
「だからうまいっつってんだろうが」
「はは、ごめん。なんか、」
「古市」
「ん?」
「なんつーか、なんか俺ら全然会ってなかったじゃん?」
「…うん」
「で、まぁ、その」
「……」


「一緒に住まね?」


え?

「え、それ…」
「まぁ俺も仕事始めてよ。準備期間っつーかなんつーかで全然お前と会えなくて。その、」
「……男鹿」
「あ?」
「好き。大好き」
「あーもう知ってるっつーの。今更言ってんじゃねーよ」
「なぁ古市?」
「ん?」
「一緒に住んだらさ」
「うん」
「お前飯担当な」
「うん」
「風呂掃除は俺やるな」
「うん」
「今度一緒に物件探しに行こうな」
「うん」
「ごはんくん置いとこうな」
「うん」
「ジャンプ読むの楽になるな。交互に買わなくていいもんな」
「うん」
「あと毎日ヤろうな」
「お前結局それかよ!!」
「あと俺は別にお前が風呂から出てフルチンでも気にしないからな」
「フルチンなわけねーだろ!」
「あとお前の使った後のトイレがうんこ臭くても気にしねぇからな」
「俺お前のうんこ臭いから嫌だ」
「お前、俺を愛すなら俺のうんこも愛せよ!」
「嫌だわ!なんで俺お前のうんこ愛さなきゃいけないの!?」
「あ、喧嘩したらお前から謝れよ?俺ぶん殴るかもしんねえから」
「いいよ殴っても」
「いや、それは駄目だろ」
「つか喧嘩しねえだろ」
「まぁな」

にかっと男鹿が笑う。


でも。まだ、聞いてない。
そんなんじゃ足りねえ。


「あと。なんか他に言うことないの」
「あ?」
「ほら、今日」
「ポッキーゲームでもするか?」
「嫌だわ!」
「じゃああれだ。もしやお前俺のTシャツ欲しいんだな?ったく。素直に言えばいいのによ」
「そうじゃなくて!」
「誕生日おめでと?」
「っ……それ!!」

思わず顔が赤くなる。
うわはっず!!

「古市」
「へへ」

一緒にいるだけで、幸せなんて。
あーもう!ずるいんだよばか!



そして、どちらともなく唇を重ね合わせた。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ