黒バス二次創作
□クリスマス
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「綺麗だね」
「そうだな」
「ちょっと無愛想すぎじゃないか?聖夜に恋人といるんだぞ?」
「別にいつもと変わらん。誕生日に自分のことを放っておかれてそこらでイチャイチャされまくるなんて嫌だろうが」
「ま、そうだね。でもせっかくだろ?なぁ、み・ど・り・ま?」
わざと耳元で名前を囁く赤司。
「ちょ、馬鹿、」
「真っ赤。可愛い」
「信じられん!ここは公道だぞ!」
「いいじゃないか。ほら周りを見てごらん?俺たちがいっぱいだぞ?」
「はぁ?」
周りを見渡す。
緑色のツリーとリース。
サンタ服に飾り付けられた赤いリボン。
「あっ」
「だろ?」
「ばか」
「な、緑間。お前の家、空いてないか?」
「今日なら誰もいないが」
「真子ちゃんは?」
「友達の家に泊まりに行ってる」
「決まりだね。メリークリスマス」
「こういうのは好きじゃない」
「いいじゃないか。お堅いなー」
「浮かれるのは馬鹿みたいじゃないか。俺はどんな日だってお前のことが好きだ」
「ねぇ緑間」
「…」
「また真っ赤になってる」
「言うんじゃない!」
「俺の誕生日は一緒にいられなかったもんね」
「そうだな」
「ケーキ買って行こう?コンビニで充分だから」
「おしるこがいいのだよ」
「はいはい」
二人でこっそりと手を繋いで歩いたあの道は、いつまでも俺の頭から枷のように離れない。
今年もまたこの季節がやって来て、笑いながら誘う。
町中に散りばめられた電飾と、赤と緑。
あの頃の懐かしい幸せはもうない。
彼はもう、俺の手の届くところにいない。
冬空を見上げる。
雪は降らなそうだ。
あぁ、降らないで。
あの頃の俺たちを消さないで。
全て白く塗り潰すなんて野暮なこと、しないでくれ。
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ふと懐かしい思い出が蘇った。
懐かしい、とは違うかもしれない。
むしろ新鮮と言った方が正しいんだと思う。
この思い出は僕のものじゃない。
僕と真太郎の思い出じゃない。
俺と緑間の思い出だ。
まぶしい。
見慣れない光、見慣れない風景。
見慣れない仲間、見慣れない世界。
いつの間にか、全ては変わっていた。
お前の隣にいられる僕じゃないんだ。
さようなら。思い出。
さようなら。真太郎。
でも。お願い。
あの頃の俺たちを消さないで。
全て白く塗り潰すなんて野暮なこと、しないでくれ。
ねえ、神様。