黒バス二次創作

□ほんとうの二回目の特権
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「今吉さん」
「んー?」
「俺翔一さんの肩好きです」
「肩?」
「きれいじゃないですか」
「気狂ったか〜?こんなんきれいとか」
「な訳ないでしょ」
「しかし肩かー。よう見とるなぁ」
「なんていうか、かぶりつきたい感じ?」
「さすが鷲さんやなー」

午前5時。
ベッドの上にいる。

この関係になってから、およそ半年。
半年、幸せにやってきた。
それが本当の幸せかどうかは、わからないけど。

元々体から始まった関係だから、正直信用はできない。
でも信頼ならしている。

お互い不思議な距離だ。
二人とも相手のことに踏み込まない。
というか、踏み込めない。

翔一さんのこと、好きだと思う。
翔一さんも俺のこと、好きって言ってくれる。

それ以上には何も望まない。
そのひとの全てが欲しい、とか。


「俊、まだ敬語なん?」
「敬語のが楽ですもん」
「黒子くんみたいやねぇ」
「せっかくなんですから、他の人の話、しないでください」
「すまんすまん。俊は妬くなー」
「悪いですか」
「ワシ嫉妬されるん好きやねん」
「ワシは鷲」
「なぁ。雰囲気的におかしいと思わへん?」
「思い付いたら言わないと」
「ちょ、自分ww」

くく、と今吉さんが縦に揺れる。
さらさらの髪が乱れて、なんだかそれに興奮した。

「ねぇ、翔一さん」
「なんやー今日はもう無理やでーおっちゃん限界」
「おっちゃんって…」
「ワシ今腰痛めとんねん」
「腰ですか?バスケで?」
「せやねん。まぁ、収まってきた方なんやけど」
「ごめんなさい…」
「ええのええの。すまんなぁ」
「大丈夫、ですか?」
「ほんま気にせんでええから。ワシも嬉しかったし。あぁ〜はよ治って〜」

今吉さんの腰をさする。
悪いことをしてしまったかもしれない。

「高校んときはなぁ、全然体とか壊さんかったんやで?年やなぁ……」
「年って…」
「もうおっちゃんやから」
「冗談言わないでくださいよ」
「それ俊が言えることやないやろwww」

それはそうかもしれないな。

凝り固まった今吉さんの腰をさすりながら、そう思った。



「あの、俺そろそろ帰ります」
「ん?あ、せやな。用事ある言うとったもんな」
「すいません」
「いや、気にせんでええよ」
「じゃ、また今度」


パタリ、とドアを締める。
足取りは重く、気が進まない。
この後に会う相手のせいかなんなのか。

日向に、呼び出されている。


その事実がどうしようもなく今の俺を苦しめているのだ。






***



「よ」
「ん」
「とりあえず、座れ」
「うん」

かつて日向と通い詰めたファミレスは、昔と変わらないまま。

ピンポーン、と小気味の良い音が鳴る。

「コーヒーゼリー、ひとつ」
「あと、アイスコーヒー。ブラックで」

このウエイトレス中学のとき同じクラスだった西内に似てる、なんて馬鹿なことを考えた。
いや、考えなきゃいられなかったんだ。
どこから見たって雰囲気はおかしい。男友達二人にはどうしたって見えないだろう。


「その、えっと、何?」
「木吉と別れた」
「………!!」

言葉が出なかった。
喉が詰まって、息がうまく吸えない。
膝がカタカタと震えているのを感じた。

「へ…?……なん…」
「俺が振った。もうお前と付き合ってらんないって言った」
「なん、で」
「俺、ネコ無理だわ」
「まさか、それだけ?」
「いや、それだけじゃねぇけど」
「じゃあ、何」

この時、淡い期待があったのは隠さないでおこう。

「伊月。お前だよ」
「……今、なんて」




「好きだ」


試合と同じ時の真面目な顔の後ろには、コーヒーゼリーとアイスコーヒーを持ったウエイトレスが見えた。

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