銀魂二次創作(腐向け)

□きみとぼくとおりおん
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日没の時間がだんだんと遅くなって、春が近付いて来た。

あっという間に三年が経った。
本当にあっという間に。


「ねぇ知ってます?土方さん」
「あ?」
「オリオン座、なくなるらしいですよ」


「どうした急に」
「この間見たんでさァ。土方さんの携帯で」
「てめえまた勝手に使いやがって」
「なんですか俺に見られたくないものでもあるんですか」
「いや、別にそういうのはねえけど…」
「まぁ、それはおいといて。なんかこう、星が爆発しちゃうらしいんですよ」
「だろうな。なくなるんだもんな」
「なんでも屁出るギウスとか」
「ベテルギウスな」

総悟の目は、いつもと同じで眠そうだ。

ふと空を見上げる。
雲一つない夜空だ。いや、この言い方はおかしいか。
オリオン座は確かにまっすぐ光っている。消えることなんて全く知らないように。
それがなんだか少しつらくて、地面に視線を落とした。


俺はこの3年間の間になにかを残せたのだろうか。

もどかしい思いを抱えながら、前を向いて歩くのは難しい。
ずっと胸の内に隠してきたこの思いを伝えることは、きっとできない。いや、しない。

「ねぇ土方さん」
「ん?」
「もっとちゃんと授業受けてりゃ良かったかなぁ」
「そうだな」
「もっとちゃんと部活やればよかった」
「いいところまでいったじゃねえか」
「だって今年のメンバーなら、全国制覇できたのに」
「まぁな。でも俺らが残した結果だってすげえだろ」
「そうかもしれねえけど。俺すげえ悔しかったんでさ」
「そんな風には見えなかったけど」
「俺ァ本当の感情は中にしまい込むタイプなんで」
「そうか」
「あとね。俺、もっとクラスの奴らと馬鹿やればよかった」
「十分やってたぞ」
「あとね」
「うん」
「俺…」
「ん?」
「俺、もっと土方さんと、一緒にいてぇ」
「……何言ってんだよ」
「あのね、土方さん。俺ね、ずっと」
「それ以上言うな」
「土方さ」
「言うな。総悟」
「土方さん」

総悟の顔がぐしゃぐしゃになる。涙がつつ、と頬を流れ落ちた。


「ひじ、かたさ…ん」

俺の胸に顔を押し付けてきた。
しゃくりあげる声が聞こえる。

「おれ、ひじかたさんと、もっともっと、いっしょにいたかった、です」

頭にぽん、と手を置いた。

「そうだな」

初めて見た。こんな総悟。
内心驚きが隠せない。

「ひじかたさん、」

総悟が顔を上げる。
7cm差ってこんなにでかかったっけ、なんて呑気なことを考えた。

目には涙が溜まって、光の下できらきら輝いた。
次第にふたりの間の熱が、じわりと広がっていく。

「ひじかたさん、さっきのほんと?」
「泣いてる奴に嘘なんかつけねえだろ」



今はこんなに輝いているオリオン座がすぐに消えてしまうなんて。

好きで好きでどうしようも堪えられなくて。でもこの思いのやり場は他になくて。

あぁ本当に綺麗だ。



誰のもとにも春はまたやって来て、風の音をすこしだけ残して去っていく。
もう一度、あの春がやって来ればいいのに。

微かに光る星と俺と総悟と。
そんな世界がずっと続けばいいと、腕の中に小さく収まった奴をもう一度しっかりと抱きしめた。

爆発なんかしないように、消えないように、なくさないように。確かめるように抱き合う。


「土方さん、俺ァあんたに散々迷惑かけやした」
「うん」
「でもね、絶対寂しくなりますよ。俺がいない生活は」
「いや、寧ろ清々するわ」
「あんたこんな時くらい素直になればいいんじゃないですかィ?」
「こんな時だから素直になれねえんだろ。お前こそなんで今日こんな素直なんだよ」
「そりゃドSにだって情はありますよ。最後なんだから」
「最後とか、言うんじゃねえよ」
「へいへい。すいやせんね。へへ、おかしいや。あんたが一番泣きそうじゃねえですか」

例えばどれだけ長い間思い合っても、一緒に生きていけないこと。形にならないこと。
全部わかってる。わからないほど子供じゃない。

だけどまだ諦めきれなくて。一秒でも離れたくなくて。
もっと早くにこの思いを伝えていれば、なんて望んで。

好きだなんて。愛してるだなんて。
そんな言葉じゃ言い表せないほどの

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