銀魂二次創作(腐向け)

□せんせー
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あちぃ。
マジであちぃ。

あああああああちいいいいいいい!!!!!

大会を目前に控えた7月。
こんなん7月の暑さじゃねえ。

扇風機がかろうじて一個あるが、こんなんじゃむさ苦しい男だらけの更衣室には何の意味もない。


バァアン!

きたか。あの野郎。

「おい!総悟!お前今日居残りだろうが!」
「プリントだろィ?ちゃんと出しやしたぜ」
「ちゃんと埋めてから出せ!空欄か落書きばっかだろ!」
「あーちょっと山崎。どうにかしてきてくんね」
「もう沖田さん、ちゃんと行って来てくださいよ。部活出れないんでしょう?やんないと」
「ちっ」

へいへいと気の抜けた返事をしながら更衣室を後にする。

「なぁ総悟」
「なんですかィ」
「お前な、こないだ試験国語何点だった」
「99」
「数学は」
「98」
「英語」
「97」
「理科」
「100」
「社会は」
「6でさァ」
「なんで社会は一桁なのかなぁ沖田くん」
「せんせーの授業が下手くそだからじゃねェですか?」
「いや俺の担当クラスは服部のとこより平均点いい」
「マジでか」
「なぁ社会頑張りゃ学年トップいけんだろ」
「その社会ができないんでさ」
「…お前んとこの担任」
「あー旦那ですかィ」
「お前変なあだ名つけてんじゃねえよ」
「自分にはつかないからヤキモチ妬いてんですかィ」
「な訳ねぇだろ。坂田に言われんだよ。お前のせいで俺んとこの生徒がどーだこーだって」
「無視しときゃあいいでしょう」
「つーかお前絶対わざと間違えてんだろ」
「いや?本気でやってまさ」

ガラガラ、と隣のクラスの戸が開く。

「今日他に居残りのはいねぇんですか」
「いねぇよ」
「えー」

よっしゃ、と心の中でガッツポーズする。
二人きりじゃねぇか。

「つーか、待て。お前プリント持ってんの」
「なくしやした」
「マジでか。持ってくるわ」

先生が立ち上がった。
背中にシャツが汗で貼り付いている。
なんかエロい。事後みてぇ。

プリント無くしても怒んないなんて、せんせーも甘いなぁと思う。

隣のクラスの担任、土方せんせー。
去年の俺の担任、土方せんせー。
俺のクラスの社会担当、土方せんせー。
部活の顧問、土方せんせー。
俺の一目惚れの相手、土方せんせー。
俺の彼氏、土方せんせー。

教師との恋愛なんて、ドラマの中の話だと思っていた。
それが現実になったのは、去年の夏だったろうか。


今日みたいにとんでもなく暑い日だった。

お姉ちゃんが入院したとき、俺の様子は明らかにおかしかったらしい。
それに気付いたあいつが、提出物が出ていないと嘘をついて、教室に招き入れた。

その時はじめて本当のことを他人に告げた。
あいつは話を聞いたら、俺にチューペットを投げてきた。
「それ半分ずつな」って。
貧乏くせぇ。大人のくせに。

甘くてつめたくて、幸せだった。
久しぶりだった。こんなに安心したのは。

そして教卓に寄りかかりながら「俺に頼れ」と言った。
窓から吹く風が少し涼しくなって、塩素のにおいがした。
そういえばあの日の体育はプールだった気がする。

近づいてきた顔は凛々しかった。
あぁ、この人のものになれたらどれだけ幸せなんだろうと。

それから一週間後。
「俺のものになって」
何故かテレパシーで伝わったらしい。
何回思い出しても、くっさいセリフだ。


あの教室のある校舎は夏休みに取り壊されるらしい。
すこしさみしいと思う。

確かにあそこは老朽化も進んでいる。
壁の塗装も剥げてたし。

せんせーはその事に対して、何か思っただろうか。
俺と同じでさみしいと思ってくれたらまだ取り壊されるのも許せる気がする。



半袖のワイシャツからちらちらと見える赤い痕。
ばか。なんでこんなにいっぱいついてんでィ。
絶対ばれんだろ。



ガラ、と控えめにドアが開く。
せんせーじゃねぇな。多分。

「すいません。忘れ物で…ってあなた」
「雌豚じゃん」
「やだわ。久しぶりね」
「おう。クラス変わってからはな」
「どうだ。旦那は」
「相変わらず全然なびかないわ。そこが興奮するんだけど。あなたはうまくいってるの?」
「順調順調」
「羨ましいわね全く。私も早く言いたいわそのドヤ顔で!」
「精々頑張れ」
「あなた…もしかしてSやめたの?」
「え、いや」
「分かったわ。土方先生に調教されたのね!」
「そうじゃなくて」
「あなたがそうなるのも仕方ないわ。虐められる、辱しめられるのはたまらないものね」
「う…」

確かに俺は少しMになっていると思う。
あいつのせいで。
なんかムカつくな、ちくしょ。

「あ、もしかしてこれから先生と?」
「居残りでさァ」
「それはよかったわね。私もこれから先生を尾行しに行ってくるわ」
「通報されないようにな。雌豚」
「ええ。細心の注意を払うわ。じゃあね」

俺と先生の仲を知ってるのは、こいつと旦那だけだ。
雌豚とはなんだかずっと仲が良かった。
あいつが旦那を好きなのも知ってた。
旦那には、ばれちまったしなぁ。

でもまぁ、いいかなと思う。
二人とも周りに言いふらかすようなやつじゃない。





「ん、これな」
「ありがとうごぜえやす。うわなんじゃこりゃ全然わかんねえや」
「ほら、これくらいわかんだろ」
「えー総悟わかんないなぁー」
「かわいこぶるな!可愛いけど!」

そう言うとせんせーはため息をついた。

「マジで学校でそういうのやめろ」
「あんたが呼び出したんでしょう。そういうことしたくて」
「あのなぁ…」
「プリントやらせなくていいんですかィ。ひいきでさァ」
「もうなんでもいいわ。いっそヤるか?」
「気持ち悪ィ。何盛ってんでさ。ほんと死んじまえ」
「なんか俺も疲れたんだよ」
「…」
「だから、癒されたいな?みたいな」
「あ、チューペット持ってやす?」
「話聞いて!?ねぇ!!」
「せんせーあちー」
「俺もだ!」
「死ね!!!!!」
「てめぇが死ね!!!!!」
「土に埋まれ!!!!!」
「畳の隙間にに入り込め!!!!!」
「死にやがれ!!!!!」
「お前も一緒に死ね!!!!!」
「あぁ死んでやる!!!!!」
「あ、なに一緒に死んでくれんの」
「せんせーはヘタレだからどうせ一人で昇天できないでしょう」
「そういう理由かよ…」

別にせんせーと死ねるなら今すぐにでも死んでやる。

「お前今誰と仲良くしてんの。去年神威とよくいたけど」
「まだ仲良いですぜ。今は…高杉とか」
「お前神威高杉って…毎年すげえ奴らといるな」
「別に巻き込まれたりしやせん」
「ならいいけどよ…」

一応心配してくれてんのかな。
ちょっと嬉しいかもしんねぇ。土方のくせに。


「今日うち来るか?」
「え?いいんですかィ」

お姉ちゃんが入院してから、たまにせんせーは家に呼んでくれる。
大概泊まって帰ることになるけど。


「買い物付き合うならな」
「24にもなって一人で買い物もできないんですかィ。あんたちょっと心配するレベルですね」
「違えよ!!!!!」
「わかってまさ。スーパーでも天国でも地獄でもどこだって付き合ってやりやす」
「なに、デレてんの」
「飴と鞭ってやつでさァ」
「お前さ…」
「へい」
「Mだよな?」
「…いや」
「いや、Mだな」
「違いや…」
「Mだな」
「話聞け土方ァァアアァアア」
「だってお前、俺が焦らすと…」
「一人で昇天したいですかィ。今ここで」
「ごめんなさい」

きーんこーん

「最終下校時刻か」
「え、もうそんなですかィ」
「正門前で待ってろ。荷物取ったらすぐ行くから」
「へい、わかりやした」
「ん、ほら食え」
「あ」
「お前さっき言ってただろ。チューペット」
「うめぇや」
「それ食って待ってろ」
「子供扱いすんな」
「してねーよ。もう高2だろうが」

子供扱いされるのは昔から嫌いだった。
確かにオレンジジュースも喧嘩も虫採りも好きだけど。

「じゃ、ちゅーしてくだせぇ」
「ばれんだろ」
「大丈夫でしょ」
「あんますげーのできねぇからな?」
「わかってまさ」

せんせーの顔が近づいてくる。

あと1センチ、


そう思ったとき、チューペットが溶けて手のひらに零れた。
あぁ洗濯が、めんどくせぇ。



空がチューペットのぶどうの色になって、窓から見えるふたつの星がよく映えた。

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