銀魂二次創作(腐向け)
□お誕生日おめでとうしろう2013
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あと1分で日付が変わる。
明日は5月5日。
世間ではこどもの日。
武州でも、大きな鯉のぼりが上っていた。
貧乏だったけど、鯉のぼりだけは異様に大きかったんだよな。
柏餅…食いてぇなァ。
俺だってまだ18歳だ。
20歳未満なんだから、まだ子供だろィ。
まぁ…酒は飲んでるけど。
近藤さん許してくれてるし。
いいじゃないですかィ。
あのバカは認めてないけどな。
土方さんのバカ。
あいつは、なんだか俺のことを軽視してる…っていうか。まだ子供だと思ってるっていうか。
さっき自分のこと、まだ子供だって言ったのはどこのどいつでィってな。
俺なんて、いくつになっても土方さんにとっちゃ子供だろう。
何せ、あんなちっせぇ頃から見てたんだから。
明日は非番だ。
休みったって、そんなする事ねぇだろ。
いつもはその辺ぶらぶらと歩いて、団子食って、猫撫でて、公園で寝て…屯所に帰って、飯食って、風呂入って、終わりか。
別に会いたいやつもいねぇし。
たまに女子プロ見に行ったり、万事屋行ったり、チャイナとかエリートとか旦那とかと戦ったりもするけど。
「沖田さーん」
戸を叩く音。
「あぁ?こんな遅くに何しに来たんでィ」
「すいません…あの、5日の話なんですけど」
「こどもの日イベント?」
「違いますよ嫌だなー。土方さんの誕生日会です」
「あぁ。俺欠席だから」
ピシャン
「沖田さーん!!ちょっと!!!!」
俺が出るわけないだろィ。
こんな気持ちのまま、普通の顔して出れるやつがいるなら、ちょっと俺んとこまで来い。
土方さん、ごめんなさい。
俺はあんたのこと、きっとどうしようもなく好きなんだと思う。
姉上が死んで、それでもまぁこんな風に居られるのも、近藤さんとか土方さんとか、旦那とか皆がいたからで。
チューペットの時、俺が言ったあの言葉も全部本心だ。
あの時、あんたが命懸けで俺を守ろうとしてくれたとき。
やっぱりあんたは俺を姉上と重ねて見てるのかもしれないけど、それでも俺があんたの守るものの対象に入っているなんて、こんなに嬉しいことはない。
「土方さん…」
気付いたら俺は、部屋を出ていた。
会いたくて、顔が見たくて、声が聞きたくて。あの煙草臭い匂いにまた触れたくて。
寝息が聞こえる。
寝込みを襲うってわけじゃないけど。
そっと障子を開けてみた。
「土方さん」
小さく声をかけた。
起きる気配はまるでない。
「誕生日、おめでとうごぜぇやす。俺、誕生会、行けないんで。いつも、すいやせん」
そう言って、部屋へ帰った。
****
「旦那〜」
「あ、総悟くんじゃん」
「なんでいきなり総悟くん呼びなんですかィ」
「いやー好きな子には意識してもらいたいじゃん?」
「はぁ」
「今日はどうしたの」
「飲み行きましょうよ」
「お、いいね。お前の奢りで」
「当たり前でさァ。旦那今金欠でしょ?」
「よくお分かりで」
「ん?メガネとチャイナは?」
「神楽はどっか行ったし、新八は今日は来ねぇよ」
「そうなんですかィ」
「じゃ、行こうぜ」
「へい」
この時間は、気を紛らわすために、旦那と一緒に過ごすことを決めた。
旦那なら、きっと俺が苦しいときも助けてくれる。
「しかし珍しいね。俺に誘いに来るなんて」
「いいじゃないですか。別に」
「俺は嬉しいからいいんだけど。怒られちゃいそう」
「誰に?」
「お前の保護者厳しいじゃん」
「あぁ」
「今日さ、多串君の誕生日でしょ?」
「なんで知ってるんですか」
「なんでも」
「嫌だなぁ。なんか俺旦那にやばいこと握られてそう」
「はは。かもな。そうそう。昨日あいつから電話かかってきてな」
「へぇ。なんて?」
「総悟が万事屋来るかもしんねぇから、もし来たら一緒にいてやってくれって」
それ、どういう事でィ。
「これ飲んだら、お前帰れ」
「え?」
「金払っといてあげるよ」
「旦那?」
「俺大人だから色々嫌でも分かっちゃうの」
「…はぁ」
「じゃあな」
「旦那、本当ありがとうごぜぇやす」
「おう」
全速力で、ネオンの間を駆け抜ける。
かぶき町は今夜も眠らないようだ。
屯所に着いたのは10時57分。
「土方さん!」
「総悟…」
「誕生日、おめでとうごぜぇやす!あと、ありがとうございました…」
「ん。ありがとな」
その顔は、今まで見たことないような、優しい笑顔だった。
「総悟、お前」
「今の今まで旦那と飲んでやした」
「へぇ」
「旦那って、いい人ですよね」
「ふーん」
「でも俺土方さんのが好きでさァ」
「なんで」
「だってドMじゃないですか」
「ドMじゃねえよ!!!!!!!!」
「もうわざわざ隠す必要ないですよ」
「だから隠すも何も違ぇっつの!!」
「またまたぁ」
「俺は、Mなんじゃなくて、総悟だからだよ。許してんのは」
「へぇ」
「なんだよ」
「俺、寝ますね」
「いきなり!?」
「おやすみなせぇ」
「おやすみ」
さっきの言葉の意味を考える余裕は俺にはありやせん。
明日にでも考えてみますよ。
ふかふかとは言い難い布団に身を投げる。
あ、風呂入ってねぇや。
そういえば今日は菖蒲湯の日だ。
ま、いっか。