家庭教師は好きな人でした。
□[20]何か企んでそうな笑顔が怖い
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そしてバイト初日。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか」
ボクはとりあえず、注文取り兼レジ係。
最初は戸惑って間違いもしたけど、その度に赤司君も店長の虹村さんも気にしなくていいって笑って優しく教え直してくれた。
おかげさまで、2時間後の今は何とかミスなくやれてます。
「あれ?君、見ない顔だね」
中にはやっぱりよく来る常連さんとか。
「赤司君、来たよー。きゃー、何この子新人?可愛いじゃーん」
赤司君の大学の友達とか、たくさん来る。
そして必ずと言っていいほど言われるのが。
「可愛い顔してるね。ほんとに男の子?」
そんなに女に見えますか、ボク。一応、高校生男子の平均的な体格なんですけど。
確かに、同じ制服来てる赤司君に比べると見劣りはするかもしれませんけど。
「むーん」
「何すねてるの?」
お昼の休憩の時に唸ったら、コーヒー片手に赤司君がボクの隣に座った。
「……」
じ、と赤司君を見てみる。
火神君とはまた違う、鮮やかで明るい赤い髪に、赤い瞳。
黄瀬君が言うには頭も良くて、ずっと学年1位で生徒会長もしてて、人望もあって、黄瀬君も多大なる信頼を寄せてて。
(かっこいいですよねえ、やっぱり)
「何、本当にどうしたの?」
そう言えば、黄瀬君の周りってかっこいい人だらけなんですよね。
青峰君はワイルド系だし、紫原君はあの体格で癒し系の妖精さんだし。
桃井さんは美人さんだし、……あの緑髪の人も美形だったし。
「おーい黒子君聞いてる?」
黙っていれば森山さんもイケメンだし、他の黄瀬君のバスケ仲間の皆さんの中にもたくさん……ああもう、切りがない。
「人の顔凝視したままトリップする癖は直しなさい」
ビシッ。
「痛い!」
頭に鈍痛。後ろから手刀かまされ……って、え?
「か、和君!?何でここにいるんですか!?」
「やっと正気に戻ったか。とりあえず赤司には謝っとけ」
「う、ごめんなさい、ボク、これ癖で、」
「ふふ、いいよ。人に見られるのは慣れてるからね」
ぽんぽん、って頭撫でてくれた。
「ところで和君、何でここにいるんですか?」
「森山さんがテッちゃんのバイトの事話してたから」
「何で森山さん……ああ、夕べの居酒屋のバイトが黄瀬君と一緒でしたね」
「何気に黄瀬さんのバイトスケジュール把握してるお前が怖いよ」