家庭教師は好きな人でした。
□[18]少しだけ変わった声音
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「時間よとーまーれー」
「何だ何だ、黒子やさぐれてんな」
ストバスのベンチに座ったままいじけてたら、森山さんが上から覗き込んできた。
「もうすぐで黄瀬君との同居生活が終わっちゃいます……」
視線の先では、黄瀬君がシュートを決めてガッツポーズしてる。
「よっし!」
火神君とハイタッチ、そして超嬉しそうな笑顔。可愛いです。そして火神君その位置けしからんです、ボクと代わってください。
「でも家庭教師はまだ続けるんだろ?ならまったく会えなくなるわけじゃないじゃん」
そんな森山さんの言葉にはそうなんですけど、と返す。
「朝も夜もずっと一緒にいたから寂しいって言いますか。……前はあの場所から見てるだけで満足してたのに、欲が出てきちゃったんですかねぇ」
黄瀬君が家庭教師に来てくれるまで、黄瀬君を見るためにいつもいた堤防に視線を移すと森山さんも一緒に視線を移してああそっか、と笑う。
「しょうがないさ。好きってのは、どんどん欲が出るもんだから」
森山さんもストンとベンチに腰を下ろした。
「森山さんも好きな人とかいるんですか?」
「俺はいつでも可愛い女の子には恋をしている」
「……和君はよく、黄瀬君第一なボクを「気持ち悪いほど歪みねえな」って言いますけど、森山さんもそうですよね」
「気持ち悪いほどって何だこら」
がばっと、森山さんがボクを羽交い締めする。
「わぷっ!ちょっ、森山さん苦しいです、ロープロープ!」
ぺしぺしと腕を叩いても放してくれなかったけど、この後コートから出てきた黄瀬君に救出してもらいました。
逆に、羽交い締めしてくれてありがとうございました森山さん。
夕食後のまったりティータイムの時に、ふと黄瀬君が切り出した。
「黒子っちさ、明日はもう家の方に帰るんスよね」
「……はい」
寂しいですが。
帰りたくないですが!
「俺明日バイト夜だけなんスよ。だから、昼どっかでかけないスか?バイト前にご飯食べてから家まで送るから」
「……へ?」
お出かけ?黄瀬君と2人で!?それって、
(デートですか!)
「デートのお誘い。駄目?」
にっこり笑う黄瀬君。
「だっ……駄目じゃないです!嬉しいです!」
力いっぱい答えたら、黄瀬君は少しびっくりしたのかきょとんとした顔になって。
「よかった」
そう言ってまた笑って、ボクの頭を優しく撫でた。