家庭教師は好きな人でした。
□[14]話してて切なくなってきたんです
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せっかく黄瀬君がボクを元気付けるためにピアノ弾いてくれたのに、邪魔をしてしまった。
申し訳ない気持ちでいっぱいになるボクとは反対に、黄瀬君と赤司君は堪えきれないというように笑って。
「ううん、嬉しい。ありがと」
「え?」
「今の曲、オリジナルだよ。涼太作曲」
「え!?」
「ちなみに、赤司っちと青峰っち以外じゃ黒子っちが初めてっスよ、この曲聴いたの」
「えぇ!?」
わー!わー!!わー!!?
マジですか!
「黒子っちイメージして作ったんス。ストバスで見つけた時から、出会って、そしてこうして話すようになって。俺も、嬉しかったから」
それは、ボクの言葉です。なんて贅沢なんでしょう。
「……嬉しすぎて頭パンクしそうです……」
「あはは、大げさっスよ」
「そうかな?正直だと思うよ、黒子君は」
黄瀬君と赤司君は笑ったけど、本当にそう思った。
「……忘れてね」
「?はい?」
「今日の事。やな思い、したと思うけど」
切なそうに笑って、黄瀬君はボクの頬を撫でる。
むしろ、ボクがあの人に会ったせいで黄瀬君にはつらい事を思い出させてしまったのに。
「大丈夫です。黄瀬君のピアノ聴いて、元気出ました。……ありがとうございます」
ボクの言葉に。
(うわ……)
黄瀬君は、今まで見た事もないような、まぶしい笑顔を作って。
何て言うんですか?
華が開いた?
違う。まるで、―――そう、
「ダイヤモンドが輝いたような!」
「はいはい」
「何で呆れるんですか!?」
「今更、俺がテッちゃんの話を呆れずに聞けると思ってんの?」
「いつかは熱意が伝わると信じてます」
「伝わりすぎてすでに容量オーバーです」
そうですか、それは残念ですが話は聞いてください。
あの後黄瀬君は何か用事があったみたいなのに、それをキャンセルしてまで「今日は車で来てるから」って言って、ボクを家まで送ってくれて。
「バイト行って来ます」って、頭撫でて言ってくれたんです。
しかも、家の前で。
時間があれば、あがってもらったのに。
新婚さんみたいじゃないですか?
「テンションたけーな」
「当たり前です」
ちなみにボク達が今いるのは和君のバイト先(今日はコンビニ)の隣のファミレス。