家庭教師は好きな人でした。
□[13]そこに触れてはいけない気がした
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一人暮らしをしながら大学に通っている従兄弟の千尋兄さんが、うちに半年間居候する事になった。
住んでるマンションが改装工事をするとかで、その間の住まいはマンションの管理人側が用意してくれるらしいけど、家賃を払わないといけないのは変わらないからどうせならその間だけでもうちに来たらとお母さんが誘ったらしい。
黄瀬君の事はボクから話したし、「ちゃんと自己紹介して挨拶してくださいね、お世話になってるんですから」と言ったら「分かった」と言ってくれたけど。
実際に千尋兄さんを黄瀬君に紹介したのはボクで、千尋兄さんは便乗するように「どうも」と言っただけで部屋に引っ込んでしまった。
「黄瀬君、本当に千尋兄さんがごめんなさい。あの人、人と接するの苦手で」
「あはは、気にしないで。人には個性があるっスからね、それは尊重しないと」
撫で撫で、と黄瀬君の手がボクの頭を撫でる。
黄瀬君がボクの家庭教師になって、1ヶ月とちょっと。
「さて、続けようか。……よし、正解っス」
今日も黄瀬君は、問題正解したボクの頬にキスをする。
最近ではボクも慣れてきた。
黄瀬君の唇って、とっても気持ちいいのです。
ふわふわしてる。頬にあたると、ふわん、て浮き上がる感じ。ボクが。
勉強が終わると。
「はいお疲れ様っス、黒子っち」
にこって笑って、今度は唇にキス。
ボクが顔赤くしてうつむくと、「黒子っち可愛い」ってまた笑って今度は頭撫でてくれるのです。
唇へのキスは、何回かしました。
黄瀬君の唇気持ちいいから、拒めないのです。拒む気もないですけどね!
「のろけんな」
「のろけてません」
和君に昨日の事を話してるとそんな風に呆れる。
「そっか、千尋さんいんのか。久しぶりに会いてえな」
火神君は会った事ないけど、幼なじみの和君は千尋兄さんと面識がある。
2人が最後に会ったのいつでしたっけ……。
「千尋兄さんは「高尾にだけは会いたくねえ、あのテンションは苦手だ」って言ってましたけど」
「……ちょっとオブラートに包もうか、テッちゃんも千尋さんも」
ゴン、と音を鳴らして和君はテーブルに頭を乗せる。
「……あの、ボクもしかして言っちゃいました?」
「何を?」
「黄瀬君の誕生日パーティーの時、記憶失ってる間。……黄瀬君に好きって」
「言ってないよ」
即答なとこがすっごい怪しんですけど。