家庭教師は好きな人でした。
□[8]これぞまさしく一石二鳥ですね
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黄瀬君の部屋で、黄瀬君に抱きしめられて寝ていたこの状況をよく把握しきれなくておろおろするだけのボクに、黄瀬君はようやく笑うのを止めてボクを見て「ごめんごめん」と言った。
「冗談スよ、何もない。裸だったのは、俺は元々夜は年中裸で寝る派だし、黒子っち俺の服着たがるし、俺と一緒じゃなきゃ寝ないって泣くからそのまま同じベッドで寝た、ただそれだけ」
「という事は?」
「はい。私黄瀬 涼太は、黒子 テツヤ君にそういう意味では指一本触れてません。……て事もないかー、キスはほんとの事だし」
「……それも冗談、ですよね?」
「これはほんと」
って言いながらまたキスするしっ!
「今ので5回目。言っとくけど、最初にキスして来たの黒子っちだからね?ウーロンハイ飲んでぶっ倒れて、名前呼んだら起きたけどその時すでにもう黒子っち意識なかったんスね。俺の顔見て「あー黄瀬君です」って抱きついてきて、皆の前で」
黒子っちに唇奪われました。……って自分の唇撫でて。
「……ごめんなさい……」
謝るしかない自分が情けなさ過ぎる。
「いっスよ別に。嫌じゃなかったし」
え?って思って顔上げたら。……6回目の、キスされた。
「3回目のキスの時は押し倒しそうな雰囲気にもなったしね」
「押し……!?」
「2回目のキスは、ベッドに寝かせて二日酔いの薬飲ませた時。3回目のキスでその気になりかけたけど、黒子っち寝てるんスもん。さすがに手ぇ出せないっスよ」
あの、それはつまり、……ボクが起きてたら、そういう、事に?
「ご飯食べるよね。もう10時だから、何か軽いもん作るっスよ」
「あっ、いえ、その……」
「何動揺してるんスか?」
くすくすって笑いながら。――7回目のキス、された。
どうでもいいですが、いやよくないですが、か、顔、顔が近いです、キラキラが目に刺さります、目がリアルに痛い!
朝からバイトだったはずの黄瀬君は、昨日かかってきた電話でお昼からでいいって事になってたらしくて。
作ってくれたご飯をおいしくいただいて(本当においしかった)、黄瀬君の車で家まで送ってもらって。
「俺今日夕方くらいからバスケしてるけど、黒子っち来る?ベンチまでおいでよ、昨日来てた誰かがいるし何ならゲーム混ざってもいいし」
て言葉に、「行きます。黄瀬君のプレイ間近で見たいです」って即答したら。