家庭教師は好きな人でした。

□[39]頭撫でる手どけてほしいんスけど
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黒子っちを好きになったのはいつだっただろう。

恋愛的な意味でそんな感覚を味わった事がなかったから、なかなか気付けずにいた。

でもきっと、俺がそう自覚するより前に俺の周りの皆は分かっていたんだと思う。

去年の俺の誕生日パーティーの数日後、黒子っちを襲いかけたと相談した時。

「責任取って恋人にしてやれよ」

「黒子君が眠らなかったら襲ってたんだろう?そういう事だよ」

「きゃー、きーちゃんやっと身を固めるのね!お赤飯炊かなきゃ!」

……桃っちの後半の言葉はともかくとして、いつもはまともなアドバイスをくれるのにと首を傾げた青峰っちと赤司っちの言葉も、今思えば「いつも通り」的確なアドバイスだったのかもしれない。

「簡単じゃん。黒ちんは黄瀬ちんに好意持ってる。黄瀬ちんだってそうでしょ。簡単じゃん」

紫原っちの言葉も、俺にしてみれば一見難しそうだけどやっぱり明快で。

初めての経験だから色々悩んで、最終的に青峰っちに「じゃあお前もしテツに恋人が出来たとか言われたら素直に祝福出来んのか」とか言われて、それには即答で「無理っス」と返した。

そして、黒子っちをそういう意味で好きなんだと自覚した途端。

それまでは挨拶のように出来ていた唇へのキスが、出来なくなった。

今更だけど、あんまりしすぎたらさすがに嫌がられるんじゃないかと思って。

人は恋をすると臆病になるって最初に言ったの誰だっけ。それはとてもベタだけど、とても深い言葉だと思った。




「テツが嫌がる?天地がひっくり返ったり俺がお前に冷たくすんのと同じくらい有り得ねえ」

お昼が一緒になったから赤司っちと青峰っちに相談してみたら、何言ってんだと青峰っちが怪訝な顔をする。

「聞き捨てならないね青峰、俺「達」と言ってもらわなきゃ」

「え、赤司っちそこ今拾うとこ?」

スルーして話先に進めようと思ってたのに。

「大切な事だ。お前と付き合いが長いのは俺の方だからね」

「それこそ聞き捨てならねえな。付き合いが長いとか関係ねえよ、どんだけ深いかだ」

「だからそれも含めてだよ。何、もしかして青峰、自分の方が俺より涼太を想ってると勘違いしているんじゃないだろうね?」

「ああ?何が勘違いだ。確かにテツにゃ負けるかもしれねえが、俺も黄瀬(のピアノ)に惚れてんだからな!」

瞬間。

ぴたっと周りの時間が止まり、静けさが訪れる。


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