家庭教師は好きな人でした。
□[39]頭撫でる手どけてほしいんスけど
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「ん。ありがと青峰っち」
「いちいち水くせぇ奴だな。俺とお前の仲だろうが」
にっと笑って拳を突き出してくるから、俺も笑って拳を合わせるとその手で青峰っちは俺の頭をグシャグシャと撫でて食堂を出て行った。
「わー、後半俺の事ガン無視だったね青峰。次会った時どうしてくれようか」
ふふふと怪しげな笑みを漏らすから、赤司っちも頭撫でてもらいたかったんスかと言ったら、そうじゃないと一刀両断された。
「にしても、青峰っち上機嫌だったっスね。何かいい事でもあったのかな」
「嬉しいんだよ。いつもは世話になってる涼太に頼られて」
「世話になってる?え、何の話スか?」
覚えないんスけど、と呟けば、赤司っちもぽんぽんと俺の頭を撫でて。
「そういう、無意識で人に優しく出来てる涼太が俺は大好きだよ」
「……そりゃどうも」
赤司っちはたまに青峰っち以上に臆面なく、普通なら恥ずかしくて口に出せないだろう事を言う。
しかも、青峰っちは何も考えずの事だけど。
「赤司っち、何か女の子達の数が増えたような気がするんスけど」
「気のせい気のせい」
何の需要があってそうしてるのかは聞いても教えてくれないけど、赤司っちは絶対に確信犯だ。
とりあえず、頭撫でる手どけてほしいんスけど。
その日の夕方、次のバイトまで少し時間が空いたから黒子っちの顔が見たくて。
「こーんにちはー」
カラン、涼やかな音を鳴らして開いた扉の向こう、気付いて顔を上げたのはカウンターにいた虹村さんだった。
「あれ?黒子っちも赤司っちもいないんスか?」
たいていどっちかが店内にいるのに。
「あー……」
虹村さんはちらりとスタッフオンリーと書かれた扉を見て。
「黒子は配達に行ってもらってる。赤司はいるけど休憩中だ、用事があるなら呼ぶぞ?」
「あ、いや、2人ともいないなんて珍しいなって思っただけだし、いたら何か話せないかなってそれだけだから、いいっス」
「ふうん?何か飲んでくか?」
「んー、やめとくっスわ。虹村さんの話長いから」
「んだとコノヤロウ」
「あははー、冗談っスよ。また今度ゆっくりと来ます」
「おー」
引き留める気もないのか、虹村さんはまた何故か裏を気にしながらも俺にひらひらと手を振った。
翌日。
「黄瀬、今日はもう上がっていいぞ」
「え?まだ交代の子来てないし、それまではいるっスよ」