家庭教師は好きな人でした。
□[39]頭撫でる手どけてほしいんスけど
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「ねえ、2人が俺を大切に想ってくれてんの嬉しいけど恥ずかしいからやめて。それと青峰っち、一番大事なとこ端折らないでほしいんスけど!」
「あ?」
何かまるで青峰っちが俺の事そういう意味で好きみたいに聞こえるじゃないスか、俺と赤司っちは分かってるからいいけど、って、
「赤司っち、笑ってないでフォロー!」
何か奇声に近い女の子の叫び声あちこちで聞こえるんスけど。そりゃ男同士でこんな会話してたら普通は気持ち悪いスよね。なのに。
「断る。たまにはサービスしないとね、涼太」
「何のスか!?」
懲りずに青峰っちが赤司っちに噛みついたり、それを赤司っちが楽しげに流したり、俺が絡むと何故か女の子達が歓喜とも取れる悲鳴を上げたりとかひと悶着もふた悶着もあったけどやがて落ち着いて。
「で、テツに告りたいとかいう相談か?」
「いきなり冷静っスね青峰っち。……告白、は、まだしない」
「何で。涼太達は今がすでに周りには付き合ってるようにしか見えないんだから、皆には今更だよ?」
「えっ」
「……これだから無自覚天然な人タラシ恋愛初体験イケメンは困る」
待って赤司っち、何その長すぎる異名もどき。
それは置いといて。
「何て言うか……まだ心に理解力が追いついてないというか……黒子っちから向けられる好意に絆されてるだけなんじゃないかって思ってる自分もいて」
黒子っちに好かれてるのは自覚してる。偶然聞いた赤司っちと森山先輩の話の中で、それが恋愛感情である事も知った。
だけど嫌悪感なんてなかった。逆に、こんな俺なんかをそんな気持ちで好きになってくれた事を嬉しく思った。
いつも暇さえあれば(高尾クン曰く「なければ見つけてでも」)俺で妄想してるらしい黒子っちは、いつも楽しそうで。
そしていつも幸せそうで。
「だから、ちゃんと自分の気持ちが本物かどうか確かめたい。よく分からないまま付き合って、後になってやっぱり違うなんて事になったら黒子っちを傷つけてしまう。それだけは絶対に嫌だ。だから、何もしないで見ててほしい。わがままかもしれないけど」
「ばーか。んなのわがままなんて言わねえんだよ」
後ろから名前を呼ばれて、それに反応しつつ青峰っちは空になった食器を乗せたトレイを持って立ち上がる。
「何かあったら、いっぱいいっぱいになる前にちゃんとこうやって相談しろよ。お前の味方はたくさんいる事忘れんな」