家庭教師は好きな人でした。

□[38]そうだと嬉しいですけど
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もしかして、もしかしてなんて、ね?少しは期待してるわけですよ。

「……なあ、いつまで続ける気?その意味の無い会話。そしてテツヤ、言葉と表情が微妙に合ってねえぞ。キモイ」

「キモイってひどいです千尋兄さん」

心の中で思ってる事が正直に表情に出ただけなのに。

「大体お父さん、黄瀬君のお家にお泊まりなんて初めてじゃないのに何でそんな心配してるんですか」

ちゅーはお付き合い前からたくさんしてるから今更といえば今更ですよ、とは言えない。

そもそも、付き合ってます報告をする前にすでにボクを黄瀬君のところにお嫁に出すつもりだったくせに(ありがとう!)、今頃そんな事言うなんてどこか腑に落ちなくて問い詰めると、途端にお父さんは視線をさまよわせ始めた。

「それはその、」

「今までは付き合ってるのを隠してるつもりだって思って、見守ってる気だったからじゃねえの」

「え?」

「だから、黄瀬とお前が正式に付き合ってます報告をしてからは、初めての泊まりだからだろって事」

「ほらほらお父さん、早くリビングの方に移っちゃって。片付けが出来ないから」

お父さんが言い澱んだ事をズバリと言い当てた(らしい)千尋兄さんに続いて、絶妙なタイミングでお母さんに追い出されたお父さんはそのままソファに座る。

その後ろ姿はまるで照れているのを隠しているようで、ボクは少しだけ笑った。



「テツヤ、入るぞ」

「はい?何ですか」

ノックもせずに千尋兄さんが部屋に入ってくる。

これは黄瀬君がいる時でも勉強中以外では普通だから特に気にせず振り向いて返事をすると、千尋兄さんは部屋に入ってきて珍しくパタムと静かに扉を閉める。

「さっきの伯父さんの話じゃないんだけどよ」

「違う話ならわざわざそれ言う事なくないですか?」

「初っ端から話の腰を折るな。だから、妊娠とかは飛躍しすぎだけどよ、……黄瀬はその気なんじゃねえの?」

「その気?」

「黄瀬が泊まりに誘ったのちゃんと目的があるのかもって事」

千尋兄さんは遠慮なくどさりとボクのベッドに座る。

「よく考えてみろ。次の日曜って何日だ」

「えーと、14日ですね。……あ」

3月14日。ホワイトデーだ。

「お前、あいつにチョコやったんだろ?何か特別なお返し用意してるのかもな」


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