過去web拍手

□2015.2〜2015.3
2ページ/5ページ

「もらってやらなくもない」

「姫っちーーー!! ちょーだい♪」

「姫のならありがたく頂くよ!」

「ツキヒメー俺にもー」

 そうやって月希に群がる北川たちのも、俺と同じラッピングされたもの。

 毎年こうやって月希はクッキーをくれる。変な意味ではなく、《お世話になってるから》で。

 だから、今年だって普通のこと。
 ――月希にとっては、この日は何でも無い、普通のことなんだ。分かってる、よ?

「姫くーん! これあげる!」

「わーい! さんきゅーじゃあこれあげるー」

「ありがとー! 姫くんのクッキー美味しいんだよね!」

 ……これも毎年の事ながら月希はチョコをよくもらう。

 本命チョコなんてないのは分かってるんだけど。……少しだけ、複雑。

 ああ、俺って女々しいよなぁ。

「優貴! いっぱいもらった!!!」

 へヘっと手にいっぱい袋を持った月希が俺に近寄ってくる。

 ……可愛い……。そう思って「よかったね」と頭を撫でると気持ちよさそうにまた笑う。

 ……月希の笑顔でもうお腹いっぱいだな、なんて思いながら。

 ――まさか俺から月希の本命チョコが欲しい、なんて言えるわけもなく。

 それがバレないよう、俺は愛想笑いを作った。





❤   ❤   ❤






「優貴! 俺んちで一緒にこれ食べよ!」

 毎年、この日は月希がもらったチョコを一緒に食べる日。そんな習慣がいつの間にかついてしまっていて、俺は「うん」と言って歩き出す。

 ――月希は先ほどのテンションはどこにいったのか、校門を出た瞬間から俯いてなにかぶつぶつ言っていた。その顔は少し真剣でなにかは聞かないフリをする。

 ……なんか、俺が聞いてはいけないような気がして。

 月希の家について、「俺の部屋に行ってて」と言われて鞄を部屋に置く。

 何となく手伝った方が良いかな、と思ってキッチンの方へ行くと月希は真剣な表情でオーブントースターに張り付いていた。

 ……あれかな、ちょっと温めてた方がいいやつがあったのかな。

「月希? 飲み物用意しとくよ? クリームって冷蔵庫だよね?」

「へ!?」

 俺の声にはっとしたのか、少し慌てた表情で「まっっっだっっっ!!!!」と大声を出した。けど。俺はすでに冷蔵庫を開いていて。






.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ