過去web拍手
□2015.2〜2015.3
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「もらってやらなくもない」
「姫っちーーー!! ちょーだい♪」
「姫のならありがたく頂くよ!」
「ツキヒメー俺にもー」
そうやって月希に群がる北川たちのも、俺と同じラッピングされたもの。
毎年こうやって月希はクッキーをくれる。変な意味ではなく、《お世話になってるから》で。
だから、今年だって普通のこと。
――月希にとっては、この日は何でも無い、普通のことなんだ。分かってる、よ?
「姫くーん! これあげる!」
「わーい! さんきゅーじゃあこれあげるー」
「ありがとー! 姫くんのクッキー美味しいんだよね!」
……これも毎年の事ながら月希はチョコをよくもらう。
本命チョコなんてないのは分かってるんだけど。……少しだけ、複雑。
ああ、俺って女々しいよなぁ。
「優貴! いっぱいもらった!!!」
へヘっと手にいっぱい袋を持った月希が俺に近寄ってくる。
……可愛い……。そう思って「よかったね」と頭を撫でると気持ちよさそうにまた笑う。
……月希の笑顔でもうお腹いっぱいだな、なんて思いながら。
――まさか俺から月希の本命チョコが欲しい、なんて言えるわけもなく。
それがバレないよう、俺は愛想笑いを作った。
❤ ❤ ❤
「優貴! 俺んちで一緒にこれ食べよ!」
毎年、この日は月希がもらったチョコを一緒に食べる日。そんな習慣がいつの間にかついてしまっていて、俺は「うん」と言って歩き出す。
――月希は先ほどのテンションはどこにいったのか、校門を出た瞬間から俯いてなにかぶつぶつ言っていた。その顔は少し真剣でなにかは聞かないフリをする。
……なんか、俺が聞いてはいけないような気がして。
月希の家について、「俺の部屋に行ってて」と言われて鞄を部屋に置く。
何となく手伝った方が良いかな、と思ってキッチンの方へ行くと月希は真剣な表情でオーブントースターに張り付いていた。
……あれかな、ちょっと温めてた方がいいやつがあったのかな。
「月希? 飲み物用意しとくよ? クリームって冷蔵庫だよね?」
「へ!?」
俺の声にはっとしたのか、少し慌てた表情で「まっっっだっっっ!!!!」と大声を出した。けど。俺はすでに冷蔵庫を開いていて。
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