こちら暁学園、隠れ腐男子です★
□第四話……男は誰しも狼なんですよ?
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――俺、日向葵(ひなたあおい)は人生最大の危機に至っていた。
「……ちょ……ッ?! なに、してんだ、和葉……!」
「なにって? ナニですが?」
俺は貞操の危機に陥っていた。
「はっ?! ちょ、だって今日はただ蒼太と柚葉の進展のためって……!」
ことの始まりは、蒼太と柚葉が同じ気持ちだと言うことを知ってからだ。
蒼太は柚葉が好きなんだよね、と俺が和葉に話したことからその話は持ち上がった。
和葉はさらりと、柚葉も瀬口のこと好きだぜ? なんて言うから、俺は正直驚いたものだ。
それから話は進み、「え?! じゃあ、あいつら両思いなんじゃん!」なんて俺が言って、「ああ、柚葉って恋愛に関しては奥手だからなぁー」なんて和葉はため息を吐く。
せっかく両思いなのに、もったいない! そう思っていたときだった。和葉が《ある提案》をしてきた。
――“葵と柚葉が、一晩だけ部屋交代すれば良いんじゃね?”
その提案に俺は首をかしげると、和葉は「一晩一緒に過ごせば、素直になるだろ、それにどんなに隠しても、いつかボロは出る」なんて真面目に力説してくるから、俺もなんか納得していたのだが。うん、していたよ? いや、マジでね?
…………していたのだが。
全然話が違うじゃないか!
ベッドに押し倒された俺は、和葉を見上げるかたちである。ここから和葉の表情はよく見える。……今の和葉の表情は、自分のペースに持ってこれて機嫌が良いときの、意地悪でそれでいて、妖艶な表情。
「全然話が違うじゃん!」
「……それに関しては、俺どうでもいいし」
和葉はつまんなそうにそう告げると、俺は「はぁ?!」と声を上げてしまう。
「俺的には、こーっち」
にやあ、とドSな笑顔を見せる和葉に俺はさーっと血の気が引く。
どうしてこうなった……ッ!
「……ッ…ってバカじゃ……ッ!」
「まぁまぁ、観念しろって」
「い・や・だー!!」
こういうのは、本人の同意があってこそだろ?! と苦し紛れに俺が言うと、和葉はなに言ってるんだ、と言う顔をする。
「お前からは一応了承もらってるだろ?」
「いやいやいやいや! 了承なんてしてない!」
「だいたい、さぁー……」
ふ、と和葉は笑って俺を見る。
「俺と付き合ってるくせに、俺と一晩過ごすってことでこんなことにならないってマジで思ってたわけ?」
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