短編

□中川くんの97%はドSと鬼畜でできている(前編)※
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 監禁0日目…

 ――俺、綾瀬紘は今人生最大の危機にあると思う。

 周りからは明るくて人気者だなって言われるし、まわりに人が絶えないって言うのも否定はしない。けど――……。

 実際は超面倒ごとが嫌いで、平和主義の傍観者なのである。

自分に敵を作らないようにするために観察眼だけは幼い頃から鋭く、俺は一目見たら相手の性格を見抜くという変な特技を身につけていたりする。

 なんでこんな技を身につけているかは、察して欲しい。

 うん、まぁ結構なビビりであるからだ(笑)

 広く浅く、苦手な人にはあまり近づかないように。そんな風に生きてきたら、周りからは人気者だやれ明るい奴だとレッテルを貼られてしまった。

 まぁ、今更そのレッテルを崩すほど俺もアホではないので、今までのうのうと日常を過ごしていたわけだが。

 そして冒頭に戻るのだが、――えーっと……どういうことだろうか?

 目の前の人物に俺は逃げ出したいのだが、そうもいかず必死に作り笑いを浮かべるのが精一杯だった。

「……ご、ごめんな! よく聞こえなかったっつーか……も、もう一回、言っ」

「好きなんだけど、綾瀬が」

 もう一回言って、と言い終わる前に相手ははっきりと言ってきた。……うわー俺もう逃げられない。一歩、一歩と相手が近づいてくる。

「――付き合って」

 壁に両手を置かれ、逃げ道を塞がれる。

 はうあああ!!! なに!? なんの罰ゲーム!? 俺、平穏に暮らしたいだけなのに!!!!

 表情の変わらない相手が本当なにを考えてるのか分からなくて、冷や汗が止まらない。

 好き? 付き合って? ああ、普通だったら喜ぶんだろうな、うん。女の子だったらの話だけどな!

 うん、だってほら、俺男だし。つーか告白だって初めてだし。

 でも問題はそこじゃないんだって。

 だって告白してきた相手は――……

「……中川くん……」

 男、なんだから。

 ……いや、それじゃないんだ、俺は絶対騙されないから!

 俺の観察眼は性格で外れたことなどない。

 目の前にいる中川陽太(なかがわひなた)を見た瞬間、分かった。

――あ、絶対こいつと関わったらいけないやつだ。

 瞳の奥に隠れた、悪魔のような、そんな印象。普段の彼はクールで口数も少なく、そんな彼を格好いいという女子は少なくない。でも、俺の観察眼では中川くんは超がつくほどサドだ、と分かった。目をつけられたら俺の平穏な日々が崩れる。





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