短編
□キミも知らない俺の本性(ヤンデレ×従順子羊わんこ)夏樹視点※
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小さい頃から極道で育った俺は、自分でも異常なくらい暴力には慣れていた。
裏切った仲間を爪を剥がしたりするのは日常……とは言わなくともあり得ることで、小さい頃からそれを見てきた。
極道と言う事で、一通りの武術は習ったし、相手が襲ってきたときの対処法も心得た。ただ、ナイフやカッターは普通の人は持っていないことも心得ていたので、手身近にボールペンを身につけていた。
一目見ただけで、相手の身体能力を見抜けるようにはなっていたし、情報だって、お手の物。
ただ、小さい頃はそんな環境で育った自分が怖くて、本当の両親の所に行きたいって何度も泣いた。そのたびに言われたのは、NOの答え。それが嫌で反抗の意味を込めて家に帰らないように誰も知らない場所で1人泣いた。
暗いのは少し怖かったけど、家に帰る気にはなれなくて……ただ単に、意地っ張りだったんだ。
「……あれ、僕以外に誰かいる!」
「……ッ」
「すごーい、ここ僕のお気に入りの場所なんだ、ずっと誰もいなかったから僕の特等席だと思ってたのに、初めて見た!」
そう話しかけてきたのは、同い年ぐらいの少年――それが春だった。
「……どっか痛いの?」
ぐずぐず泣いていた俺に春は話しかけてくる。
「……別に」
「……そっかー痛いんだね」
「痛くない」
「……痛いでしょ? 心が」
頭を撫でられてから、春の前でわんわん泣いた。誰かに頭を撫でられるのは――初めてで、温かい、と思ったのだ。
それから、泣きはらして家に帰ってきた俺に、家のみんなは心配そうに迎えてくれた。
誰にさらわれた、だの色々言われたけど、首を横に振るだけだ。
「……あのね……俺、ほしいのが出来たんだ」
下っ端の人はぴんとこなかったようだけど、うえの、父的存在の人は分かったみたいだった。俺がどこにいて、誰と話してきたのかを。
「……じゃあ、ぴーぴー泣いてちゃ、欲しいもんも手に入らねえぞ?」
「……うん、もう泣かない。お父さん達のことも聞かない。行かない」
中学に入ると同時に、俺は一人暮らしをし始めた。……もっとも、俺が大学入るまでは金銭は面倒見てくれるみたいだが、元々俺を継がせるために拾ったわけではないため、普通に生きていけるように、と言う意向だった。
家事は大変だったけれど、それなりにやれた。と言うか、小さい頃から仕込まれたせいで、大変ではあったけれど苦痛ではなかった。
高校では、春と同じクラスだった。
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