短編
□ぼくと、きみと。(全三回)後編※
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灯悟と桜良が世間的に言う恋人同士になって、一ヶ月が過ぎた。
恋人同士になったからと言って、何か変わるわけでもない。
せいぜい連絡先を交換したぐらいだ。……もちろん、学校でのいちゃつきは禁止。
桜良も、恋人になったからと言ってなにか特別なことをしたいというわけでもないのだ。
「……でもですね、俺としては恋人っぽいことをしたいわけですよ」
「……だから、なんで休みの日に俺の部屋を訪ねるのかな、杉崎」
はぁ、とため息をつく学園の王子――すなわち、梨本優貴は呆れたような顔で灯悟を見る。
「……だって、お前ら先輩だし?」
「なんの」
「男同士の恋人としての?」
「……」
「……」
「……姫っち、顔真っ赤。」
「うう、うるさい! そう、そのこ、恋人とか、軽々しく、ゆうなぁ!」
真っ赤にしながら学園の姫――姫川月希は大声を上げる。
「あんまり月希を照れさせないでくれるかな、杉崎。照れてる月希は俺のなんだから」
「うっせー! 俺だって桜良一筋だし!」
「……だったら二人っきりにさせてくれないかな」
「お前らがちゃんと答えたら、俺はすっぱりさっさと帰るよ」
「……はいはい、じゃあ答えるから早く質問して」
(本当、こいつ姫っちの対応と違うよな……)
むう、と不満げになりながらも、灯悟は二人に質問をすることにする。
「……じゃあ、聞くけど、付き合って何週間ぐらいで恋人っぽいことをしたんだよ?」
「……」
「……」
((もう付き合う前からすでにしてたとは死んでも言えない…。))と、心の中で呟いて、二人して灯悟から目線をそらす。
「? どうしたー?」
「……いや、キスくらいは付き合ったときにしたよなー? 月希?」
「そ、そうだな」
「?」
「あとはまぁ…………雰囲気で?」
「……なんだよ、それ……」
「恋人は人それぞれなんだから、自分で考えなさい」
「王子の腹黒ぉっ! 残念イケメン!」
「で、でも、その、お前ら二人は、その……こ、恋人になったんだろ?」
「おう、姫っち、お前はまじめに聞いてくれるのか?」
「……手っ取り早く本人に伝えた方が、良いような気もするけど」
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