眠り姫に甘いキスを。
□第五話…「いつだって、思い出すのはきみのこと。」
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その次の日の放課後。
……どうしよう、優貴をあからさまに避けてしまった…。
でも、本当に泣きそうで、胸が苦しくて、自分でももう訳わかんなくて。
…でも…ちゃんっと話さないと。
≪変な態度とってごめん≫って、ちゃんと言わないと。
俺はそう決心して、優貴へ電話をかける。
ワンコールもしないうちに、優貴が出てきた。
『……つ、月希……?』
「……あ、あの、ゆうき……っごめ…っ今朝も、昨日も…っごめ、なさ…っ」
……やっぱり俺、変だ。おかしいよ、声聞いただけで泣くなんて。
『…なにか、あった?それとも、俺が、なにか、』
「…ちゃんと、会って話がしたい。今…どこに、いるの…?」
振り絞って出した声が震える。
俺、話がしたいんだよ。
…違う。そんなんじゃない。話がしたいって言うのは口実で。
―≪俺が≫会いたいんだ。優貴に。
優貴をちゃんと、見たいんだよ。
思い出すのはただ一つ、
いつも紳士で優しくて。
そのくせ、俺に対しては意地悪で俺が困ることばっか言うし、えろえろだし、キスばっかしてくるし、すぐぎゅーって抱きしめるし。
……でも、俺の頭を撫でるときすごく柔らかく笑う顔がすごく落ち着いて。
意地悪で、腹黒でドSのくせに、俺が泣いてるとすぐ気づくしフォローするし、なに考えてるかわかんないけど、結局優しいヤツで。
俺が名前を呼ぶと、嬉しそうに笑って。
俺と目が合うと、優しく微笑む、
――優貴の優しい笑顔。
…優貴…。
優貴は、なぜか黙ったままだった。
なにかを考えているようにも思えるくらい、無言だった。
『……。』
「…ゆ、優貴…?」
恐る恐る優貴を呼ぶ。
無言のままだと、なんか拒絶されそうで、少し怖い。
いつもはうるさい廊下も、今この時間は人一人といなく、静かさで寂しくなる。
こんな状況は、悪いことしか考えられない。
『…今、どこ?』