眠り姫に甘いキスを。
□第三話…「キライになれないの」
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「ただいまぁ…」
「――月希?今日遅かったなぁ…。用事か?……………………………………………月希?」
ぼーっとしながら靴を脱いでいると、「……なにか、あったのか…?」と父さんは心配そうに聞いてきた。
「……………ううん、なんでもない。…今日体調悪いから、お総菜買ってきた。…おれ…いらないから、適当に食べてて…」
「あ、ああ…。」
――昨日は笑えてなかったと思う。
ただただ布団の中で唇を噛んで、すすり泣いていた。
眠ろうと思っても、あの情景が浮かんで悪夢へと変わる。
―――あれが夢だったら、どんなにいいことか。
あれが悪夢で、明日になればまたいつもの平凡な日常へと戻ると、信じたかった。
――でも、キスの感触や快楽の感覚、腰の痛みとかは消えることなく、これは現実なのだと実感し、ただ悔しいとか、痛いとか、辛いとか、悲しいとか、様々な感情があふれ、涙を流す。
もう自分自身なんなのか分からなくなってくる。
この涙と共に全部流してくれればいいのに。
そんなことを繰り返して、気がつけばもう朝の五時三十分。
……ああ、もうそろそろまぶたを冷やさないと、父さんに心配される。
あと弁当と朝食をつくって…それから…
……それから……………………………………………………………………………………。
…………泣いたら…だめ…だめだよ、だめなんだ。
「………………はぁ…」
ため息混じりにおれは涙を拭いて、布団から起き上がる。
「……よし、元気!!」
暗いのはナシ!父さんに心配されたら元も子もない。
――――そして、俺の憂鬱で長い一日が始まるのだった――……。
❤ ❤ ❤
泣きすぎてか、はたまた寝不足の所為か、頭がぼーっとする。
…優貴に会うのが、辛い。怖い。…苦しい。
「………………はぁ…」
けだるい身体を悟られないように、注意して教室へ向かい、窓側の、一番後ろの席へと向かい鞄を置く。
……おれは、どうすればいいんだろう。