眠り姫に甘いキスを。
□第二話…「お前は、ずるいよ」
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そんな日の放課後。
「……で、ここはこれを代入して…」
「こ、こう…?」
「そうそう」
「…じゃ、ここは?これもさっきと同じようにすればいいの?」
「うん、そう。分かってきたじゃん」
「優貴の教え方が上手いからだろ〜。木村っちより上手いんじゃね?!マジ尊敬!」
「……………それ、木村先生が聞いたら怒られるよ?」
「いやいや、木村っちの授業は俺の頭ではちんぷんかんぷん…。もうこれからは優貴に教えてもらおうかなぁー」
「木村先生に悪いって」
「おおげさだなぁ」とくすくす笑って、また優貴は頭を撫でる。
「うー、くすぐったいって」
「ふふ、ごめんごめん」
ぱっと頭から手を離して、問題を見つめる。俺も問題を解くのに集中する。
「………………………………と……と、解けたーーーーー!!合ってる?これ合ってる?!」
「ちょっと待って」と優貴は言って俺と一緒に解いた問題を見比べる。
「………うん、合ってると思うよ」
「終わったーーーーー!!」
んーっと伸びをして俺は机に突っ伏すと優貴はゆっくりとまた俺の頭を撫でる。
「うー」
「いい子いい子。よく頑張った」
ふっと優貴はまた優しく笑う。
―本当、名前の通り“優しい貴族(おうじ)”だなぁ…。
「……………………………ねぇ、優貴」
「ん?」
「―――なんで、告白しねぇの?」
俺がずっと疑問にしていたこと。
せっかくだからなんとなく、聞いてみた。
「…………………………………」
その瞬間、優貴の笑顔が消えた。
……苦々しく、苦しそうな顔へと変わる。
ねぇ、なんで?
どうして?
だって優貴だったら絶対。
「……なんで…そう言うこと、聞くの…?」
ぼそっと今にも消えそうな、泣きそうな声。
手を握りしめて、唇を噛みしめる優貴は本当に悲しそうな顔。