眠り姫に甘いキスを。
□第一話…「中学からの大親友です」
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――むかしむかし――ということでもなく、現代。
一ノ宮学園高等部―ここには二人の有名人がおりました。
この学園で、知らない者はいない“姫”と“王子”と呼ばれる二人の存在。
「…あ、姫だ」
「ホントだ―姫だ」
―――漆黒のツヤのある、さらさらとした女子にしては少し短い髪。
大きな瞳にふっくらとした血色のいい唇に、少し赤みがかった頬は、誰が見ても可愛らしい姿。
「おーい、姫ー」
「おっはよ♪姫っちー」
「…………………」
が、当の本人は相変わらずの不機嫌のご様子。
「おーい、なに朝から不機嫌なんだよ、姫ー」
「かあいい顔が台無しだぞ☆姫っち♪」
「……だっかっらっ!!!」
ずだん!!と地面を蹴って“姫”と呼ばれた人物は大声を上げる。
「――っ姫って呼ぶなああああああああああ!!!」
「わお、姫がキレたー」
「姫っち、こわくなーい♪」
―俺、姫川月希(ひめかわつき)、15歳、男。正真正銘の、男だ。
高校生にもなって、あまり伸びない男子平均身長(より、ちょっと下)の162センチと小柄な体型に加え、この名字の所為で幼い頃から俺のあだ名は“姫”。
いい加減俺だって、高校生。たとえ未だに公共料金を高校生料金で出すと《中学生はお釣りねー》と言われていたって、俺は高校生。
姫と呼ばれて嫌じゃないわけない。